第4話

たった黒1体に苦戦する上位と2体だけに苦戦する中位。だけれども四肢を回復させる魔法少女や、黒の攻撃を耐えうる魔法少女など、様々な存在が居ることに関心を覚えたノアは、次なる手を考えていた。


「ただ怪人を送り付けても意味が無い…。人を怪人に変えて倒したら魔石はどんな味がするのかな。でもそんな方法、探したことも無いから見つかるとは思えないわね。」


人を空間の操作でぐちゃぐちゃにして怪人に混ぜてみるか?キメラっぽくなってしまうけどそれはそれで良いのかも?ただその人をどう用意するかなんだよな。市民を巻き込むと何か面倒だし、ホームレスなら居ても居なくても変わらないかも?


そうと決まれば、行動あるのみ。


夜中の川沿いを探したり、都会の地下を探してみたりとしているが、最近はホームレスに対する規制も強まっているからかなかなか見つからない。


そうブラブラしていくうちに、家から相当離れた位置にある河川敷で寝ている男性を見つけた。何やら粗大ゴミやブルーシートなどを組みあわせて作ったであろうテントがある。


気づかないように近づき、ホームレスが居たテントごと空間に引きずり込む。引きずり込まれた男性はまだ気づいていないので、他にも何人か探すことに。


すると、この男性の近くに3人くらい固まって談笑している人が居た。起きているようで近づくのは困難かに見えるが、かなり簡単である。


彼らの足元に空間を展開した瞬間、彼らは転落している。驚きのあまり声も出なかったようだ。そして、空間を閉じると、そこには何もない。


今回はこの4人を利用してみよう。粗雑に怪人と組み合わせる失敗作になるだろうが、それでもいい。生きてるなら呻き声も聞こえてくるはずだ。


ここで彼らの前に現れると、跡がつく可能性があるので、上級召喚石を使い、赤の怪人を出す。4体出したところで、そのうち一体を操り、寝ていた男性の元へと誘導する。


空間を操作すれば傀儡のように動かす事など容易い。


そして男性を四肢から引き伸ばす。彼は苦痛で目が覚める。男の悲鳴は空間内を木霊するが、外に聞こえることは無い。


ちなみにだが、男3人組にはこの状況を見せている。しかし連絡手段は既に奪っている。テントごと落とす際、連絡手段になりうる機器は全て残してあるからだ。


彼らは丸腰で罠にハマっているようなものだ。


男の皮膚をスライスすると、叫び声の後に「ころしてくれ」というようになった。


もちろん男にだけ苦痛を与える訳では無い。怪人にもまた四肢を引き伸ばす。彼らもまた苦痛に喘ぎ、涙を流す者もいる。


(ほどよく引き伸ばされてきたな。あとはこねるだけだ。)


空間の拡張と縮小を自由に扱い、こねる。人と怪人それぞれの悲鳴が響くが、それも徐々に呻き声に変わっていく。


すると、少し変わったことが起きた。


先程まで赤色だった魔石が黒に変わったのだ。


(おぉ、これなら三強の実力をしっかり見ることができるかもしれないわね。)


ちょうど残り三体も実験体が居るのだ。それぞれ志向を持たせてみよう。


結果、完成したのは肉弾戦を得意としてそうなキメラ怪人。斬撃を得意としてそうなキメラ怪人、炎や水を放つ事を得意としてそうなキメラ怪人、影に潜む事を得意としてそうなキメラ怪人だ。


もれなくみんな黒になった。


今回は、4体をバラバラに配置してみよう。 1箇所に配置した時にまとめて散らされては意味が無い。実際赤程度だった怪人がどの程度強くなるのか見てみたいのもある。


今以上に強くなるには、先ず尽きることのない魔力量が必要だ。魔力制御自体は完璧だという自負があるが、魔力量は増やせるなら増やしたい。


(さて、今回はどこに配置しようかな?)



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黒が現れてから3日経った。あれからもたまに警報が鳴るが、出ても赤だ。黒は出てきていない。


そんな中、弓道をしている女子がいた。


まるで大和撫子のような立ち居振る舞いをしているのが弓聖の魔法少女イスカだ。魔法少女になる前からイスカは弓道を続けており、魔法少女になってからもそれは変わらない。


「イスカ先輩!」


「あら、どうしたんですか?」


「今日の警備班は先輩ですよね?」


「えぇそうね。でも私の攻撃手段的に遠距離なのよね。」


「もしや定位置でもあるのですか?」


「まぁ、無いことは無いけど。」


「アズールちゃんは何をしているの?」


「アズール先輩はさっきまでカラオケしてました!」


「誰と?」


「アリア先輩とシュカ先輩とフェブラ先輩ですね!」


「まぁいいわ。メルト!行きますよ!」


「はい!わかりました先輩!」


メルトとイスカはついでにソファでだらけていた1人を連れて現着する。


「ちょ、イスカ先輩…。やめてくださいっすよ。せっかく気持ちよく寝てたんすから。」


「あなたも警備班なの忘れてないわよね?」


「もちろんっす。」


「メルト、ティアは私から少し離れて行動してください。」


「相変わらずの遠距離アタッカー最強の魔法少女っすね。」


3人はバラけて行動を始める。


ティアは、地面をコツンと靴で鳴らす。そこから波が現れ、至る所で反響する。


「ここら辺には居ないっすね…。もっと奥まで行ってみるっすかね。」


波紋の魔法少女ティアは波紋を駆使して戦う。怪人の内側から波紋を発生させたり、波紋同士をぶつけたりなどで攻撃する。それだけでなく、先程のように波紋を辺り一帯に広げることで敵探知ができる。被害があるところに来た際に、被害者の居場所を探すのに非常に有用な魔法少女だ。


一方、メルトも行動する。


「邪魔な瓦礫は溶かさないと…。」


瓦礫を溶かして動きやすくする。融解の魔法少女であるメルトは、爆炎の魔法少女アリアと違い、燃やす事ではなく溶かすことに長けている。


すると、近くの瓦礫が崩れる音がした。


「誰ですか!?」


そこに出てきたのは、ただの猫である。


「なんだ、野良猫ですか。ほら、ここは危険だからさっさと離れてね〜。」


ニャーと言いながら協会側へと走っていった。


「まぁ、ここら辺は廃墟ですからね…。猫やネズミが居てもおかしくないですね…。」


すると、今度は瓦礫がゴロッと崩れる。


メルトが警戒する。


瓦礫の奥から見えたのは足だ。しかし、足にしては大きい。


(怪人?)


姿を現した瞬間、メルトは絶句する。


怪人自体はオークのような外見をしているが、その体には人間と思しき頭や腕、足が浮かび上がっている。


そして、極めつけは魔石が黒であるということだ。


「まずい!イスカ先輩!応援願います!黒が現れました!」


「ごめんメルト!こっちもいるの!」


「ティアの方にも居るっすね。なんですかこいつ、人を食ったんすか?これ。」


メルトは考える。人を食ったような怪人が三体、それぞれバラバラに現れた。しかももれなく全てが黒。


そして、協会本部前で警備員を勤めている男性も近くに何かが来ている事に気づく。


「うわぁぁぁぁ!!!!怪人だぁぁぁ!!!」


その悲鳴を聞いて1階の受付近くにいた魔法少女達数名が外に出る。


「え、きもちわる…、なにあれ。」


彼女らが見たのもまたオークのような見た目に人間の頭や腕が浮かび上がった怪人だ。そしてこいつも黒だ。


「【怪人特別警報!怪人特別警報!現在協会本部近くに4体の黒級怪人出現!救援に回れる者は直ちに行動せよ!】」


その警報を聞いたアリア達も現場に出撃するのだった。




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TS魔法少女は暗躍したい 月姫ステラ @tukihime0707

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