愛とわ

堺透明

第1話 

 僕の世界に彼女がいた。どうしても、彼女から目が離せず本を読みながら彼女を見るような”こっそり人間”だった。

 僕には、彼女に恋をするだけで精一杯。それに、彼女は人気者だ。だから、彼女に告白して成功するなんて夢のまた夢だ。


 彼女のことを好きになったのは、とても簡単なこと。それは、友達が好きになったと言う、それだけで目が離せなくなり今に至る。ちなみに、彼女とは2回話したことがある。

 

 1回目は、僕が日直の日に黒板を消していると、後ろにチョークの粉が付いている時だった。

「ねぇ、後ろチョークの粉ついてるよ。取ってあげる。」

 彼女は、背中をパンパンと叩いてくれた。僕はその瞬間、『優しい、幸せ〜』と思ってしまった。

「ありがとう」

このありがとうと言うときに、いろんな意味が詰まっていた。

それが、初めて会話をした時だった。ここで言っておきたいのが、僕は決して“M”ではない。決してだ。


 次の2回目の会話で少しは仲良くなった自信がある。それは、共通の趣味。僕のバックには、あるアニメのキャラクターキーホルダーが付いている。それを彼女が見て

「君、もしかしてOO(アニメ名)好きなの。」

「あっ、はい。」

心臓が飛び出るかと思うぐらい、びっくりした。

「OOのキャラクターの中で私も、これ好き。」

「いいですよね。・・・。」

『やばい。やばい。次、何を話せばいいー。』

「私、敵キャラのボスが父親だったのとっても面白いって思った。」

「それ、いいですよね。・・・。」

『何、話したらいい。えーっと、その父親キャラが主人公をかばって・・・。違う。感動じゃない。このキャラクターが、姫を助けに行く。これ、恋愛じゃん。・・・。やばい。彼女の顔が困ってる。どうしよう。・・・。』

「また、話そうね。」

「うん。」

『まじか。もう行っちゃったよ。くっそ、僕のイクジなし。』


いいところまでいったのに、話せなかったこの2回が僕と彼女との接点。夢のまた夢という言葉が似合いそうな僕は、彼女を視線で追いながら3回目の会話を待っていた。

すると、その時は唐突にやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る