3.終わりからの眠り

 全てが重い。

 何度も何度も、波の様に揺れながら、強い眠気とまぶたに光を当てられてるような覚醒を繰り返す。

 それでも瞼は重くて開かない。

 これでいいのだと、どこかで確信を持っていた。

 責任感と義務感で眠気と疲労を抑え込み、起き続けていたあの日々はもう終わった。

 

 戻らない…


 戻れないという確信に対して薄い喪失感と焦燥感を感じるけれど、眠っていていいのだという深い安堵に、またまどろみが寄せて来る。


 もう終わったんだ…


 ずっとあった染みのような苦しさや、誰かからの行為に傷つくことに縛られることも無い。

 

 

 眠りに沈みながら、ふと、自身の中で空いてる器を感じた。

 この眠りに落ちる前からずっと感じていた、空の器の感覚。

 ずっと、


「ここには何かが入っていたはず」


 と感じて来た。

 この器は自分。けれど誰かが入っていた。

 誰だろう。

 何で誰も入っていないんだろう。

 そう思い当たっても、それは眠りの波に煽られ消えていく。


 浮かぶように沈むように漂い眠りに沈んでいく。

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