君と奏でる、奇跡のメロディ
神月 璃夢【りむ】
第1話
いつものように、春野小雪の配信が始まった。画面の中の小雪は、今日も元気いっぱいに歌い、視聴者とのコミュニケーションを楽しんでいる。その姿を、愛香は画面越しに、しかし、誰よりも熱い視線で見つめていた。
「またね、大好き」
配信の最後に、愛香はいつものようにコメントを送る。小雪に届くことはないとわかっていても、この言葉を伝えずにはいられなかった。
愛香と小雪の出会いは、半年前まで遡る。たまたま開いた動画サイトで小雪の歌を聞いた。その透き通る歌声に、愛香は一瞬で心を奪われた。それからというもの、愛香は小雪の動画を毎日チェックし、配信があれば必ず視聴するようになった。
小雪のどこに惹かれているのかと聞かれたら、愛香は少し困ってしまうだろう。可愛い容姿、明るい性格、そして何よりも、聞く人の心を震わせる歌声。その全てが、愛香にとってかけがえのないものだった。
しかし、愛香はただのファンに過ぎない。小雪とは住む世界が違う。そう思っていた。
ある日の帰り道、愛香はいつものようにコンビニに寄った。そこで、偶然にも小雪を見かけたのだ。最初は人違いかと思った。しかし、その声を聞いた瞬間、愛香は確信した。
「小雪ちゃんだ……」
驚きと喜びで、愛香は心臓が飛び出しそうだった。しかし、同時に、声をかける勇気もなかった。
「こんなところで会えるなんて……」
愛香は、小雪の姿をただ見つめることしかできなかった。小雪は、画面の中で見るよりもずっと可愛くて、そして、何よりも輝いていた。
「あ、すみません」
その時、愛香は小雪にぶつかってしまった。
「きゃっ」
小雪は、手に持っていた飲み物を落としてしまった。
「あ、すみません!大丈夫ですか?」
愛香は慌てて謝った。
「大丈夫ですよ。私も前を見ていなかったので」
小雪は笑顔でそう言った。その笑顔は、画面の中で見るよりもずっと眩しかった。
「あの……」
愛香は、勇気を振り絞って声をかけた。
「いつも配信見てます!大好きです!」
「えっ?あ、ありがとうございます!」
小雪は少し驚いた顔をした後、嬉しそうに微笑んだ。
「もしかして、ラブリーアロマさんですか?」
小雪は、愛香のコメント欄の名前を覚えていたのだ。
「はい!そうです!」
愛香は、嬉しくて泣きそうになった。
「いつもコメントありがとうございます!嬉しいです!」
小雪は、愛香の手を握った。その手は、温かくて優しかった。
「あ、あの……」
愛香は、何か話さなければと思ったが、緊張して言葉が出てこなかった。
「もしよかったら、お茶でもしませんか?」
小雪は、そう言って愛香をカフェに誘った。
「はい!」
愛香は、二つ返事で了承した。
カフェでは、小雪と色々な話をした。好きな音楽、好きな食べ物、そして、Vチューバーを始めたきっかけ。
「私、歌でみんなを笑顔にしたかったんです。辛い時、悲しい時、私の歌を聞いて元気になってほしい。そう思って」
小雪は、そう言って微笑んだ。
「小雪ちゃんの歌は、本当に素敵です。いつも元気をもらってます」
愛香は、そう言って小雪を見つめた。
「ありがとうございます。そう言ってもらえるのが、一番嬉しいです」
小雪は、そう言って照れ笑いをした。
愛香は、小雪と話しているうちに、どんどん彼女のことが好きになっていった。画面の中の小雪も素敵だけど、目の前にいる小雪は、もっと素敵だった。
「あの……」
愛香は、帰り際に小雪に言った。
「これからも、ずっと応援しています!」
「はい!ありがとうございます!これからも、頑張ります!」
小雪は、そう言って愛香と手を繋いだ。
「またね、大好き」
愛香は、心の中でそう呟いた。
その日から、愛香と小雪の距離は少しずつ縮まっていった。
君と奏でる、奇跡のメロディ 神月 璃夢【りむ】 @limoon
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