寿命が尽きる寸前に禁術に手を染めアンデッドの最高峰であるリッチとなったルドルフ。人間を辞め不死者となってから10年……ルドルフはすっかり暇になっていた。
魔術の研究は思いのほか順調に進んで一段落し、新しい目標を見つけようにも「時間はいくらでもあるから」とついつい先延ばしにして、不死の王なのに屍のような日々を送るばかり。そうした平穏な暮らしの中、ルドルフが潜むダンジョンに冒険者たちが侵入してくる。凶悪なリッチの姿に恐怖した冒険者たちはルドルフが何もしない内に仲間の少女を囮にしてその場を逃げ出してしまう。こうしてルドルフは見捨てられてしまった少女の面倒を見ることに……。
すっかり人間をやめてしまっているのに、妙に人間臭いルドルフの言動が面白い。昔の仲間がダンジョンを訪れればお茶とお菓子を出して歓待するし、かつて魔王討伐の際の冒険ではパーティーの雑用係を担当していたために細かい気配りも利く。できた骸骨だ。
そんな彼に弟子入り志願する少女セラは素直で可愛らしい性格をしており、このリッチと少女の師弟というミスマッチな組み合わせが大変魅力的。物語はまだ途中なものの、すでに物語は最後まで書き終わっているということで、この師弟がどのような道を歩むことになるのかぜひ最後まで見届けていきたい。
(「不死身な人々」4選/文=柿崎憲)