多様なジャンルの面白さが一挙に味わえる作品でした。
ホラーのような緊迫感、ストーカーサスペンスのようなねっとり感、そして近未来に実際に起こりそうなSF的な興味。
主人公は「サリー」に追跡される。サリーとはどうも車らしい。
これはもしかして、スティーヴン・スピルバーグの「激突!」みたいな事態が起こっているのかな、と思いながら読み進めると、「あ、違う! 同じ『スティーヴン』でも『キング』の方だ!」とホラーファンなら嬉しくなる展開に。
サリー。高度に進化したサポートAI。そんな「彼女」が主人公を熱愛し、「自分以外の乗り物に乗るな」などと嫉妬してくる。
スティーヴン・キングの「クリスティーン」みたいに無言で追い詰めてくるのではなく、「めんどくさい彼女」的なムーブを繰り返し、他の乗り物だとかAIだとかに嫉妬してくる。
そんなほのぼのしたやり取りが見られるのも本作の面白い点でした。
果たして本作は、ホラー的に主人公が追い詰められる形になるのか。それとも、ラブコメとして和解できる方向でも見つかるのか。
色々なジャンルの魅力が巧みに融合されているので、どういう方向に転がるのかとぐいぐい引っ張られます。
読んでいて次々と想像力が刺激され、とても楽しく読める作品でした。二千字前後でこの満足感。オススメです!