終末の週末が訪れる

ゼロ

episode1.終末の週末が訪れる

「……何日かかったのかな」



私は、広大な草原を照らすように登っていく太陽をただじっと見つめる。



久しぶりの感覚だ。そんなに時間が経っているはずがないのに、100年ぶりぐらいの感覚と体が錯覚しているようだ。



「ぎぎぎっ、」



音に気づいて後ろを向くと、鉄の扉が閉まっていくのが見えた。



それを見届けたあと、もう一度前を向く。



「さて……まずはなにをしようか」



そんなことを考えながら、ここまでの道のりを思い返してみる。





目が開く。



どれくらい眠っていたのだろうか。



あたりが暗い。蛍光灯をつけるリモコンを探す。



ない。



もう一回探す。



ない。



おかしいな。おそらくここは自室で、それでベッドで寝ていたのでは。



……いや。何かがおかしい。



そもそもこれはベッドじゃない。じゃあ何なんだ?



立ち上がろうとする。



「……あれ?」



情けない声が漏れる。



そして気づく。



立ち上がれない。体に力が入らないと。



やはりおかしい。夢でも見ているのではないだろうか。



そう思ってベタではあるが、頬をつねろうとした。が、力が入らない。というか、腕すら上がらない。



だめだ。一度状況を整理しよう。



まず、私の名前は……、私の……名前は……?



……悪い夢でも見ているのだろう。そう思って私が考えるのをやめようとしたとき。



辛うじてほんの少しだけ動いた足の指先に、何かが反応する。



モーター音のようなものが聞こえると思うと、



「ぱっ」



一気に部屋の電気がつく。



やっと見つけた明かりに喜ぶ暇もなく、激痛が私を襲う。



「あ゛あっ…、」



目が痛い。目の細胞がすべて焼き死ぬのではないかと思うほどに目が激痛で仕方がない。



ようやく光に目が慣れてきて、目を細めながら私はあたりを見渡してみる。



ひんやりとしたその部屋には、本棚らしき、というか本棚が1つ。そして、電球が1つ。あとは、缶詰らしきものがいくつか。



壁は一面コンクリートで、鉄骨が見えてしまうほどで、つくりは適当に見える。ちなみにベッドだと錯覚したものは、棺桶のようなものなのだが、石でできているようだ。



とりあえず、体の回復を待とう。少し経てば立てるはずだ。



私の推測は半分あっていて半分間違っていた。



実際、立てるようにはなった。しかし、それにはとても時間がかかった。おそらく丸3日ほどだ。(正確な時間は、時間を調べるものがないのでわからない)



ともかく、立ち上がれたのだ。本棚を見てみよう。



「あ、」



日本語だ。私の第一言語のはずなのだが、どうして何故か、今の自分に上手く日本語を使えられる気がしない。



それを見越してなのかはわからないが、見つけた本はどうやら国語辞典のようだ。あとそれと図鑑。動物とかの図鑑のように見える。



ただ、見つけたはいいものの、今の私には国語辞典を持つほどの握力はないようだ。



とりあえずもう一つの物資、缶詰を手にとってみる。



特に何かパケージがある訳でもなく、ただ賞味期限?消費期限?どちらかはわからないが、数字だけが書いてあった。



2292 4/34



数字の並びから推測するに、西暦、月、日付のはずなのだが……。



大したものだ。そんなに缶詰は持つのか。というか、34日と言うのは存在しないような……。



まあ、いい。とりあえず食べれるならなんでもいい。お腹が空いて仕方がない。



握力がある程度回復するのを待ってから、私は缶詰を叩いたり投げたりしてこじ開けた。



中にはおそらくコンビーフであろうものが入っていて、味も美味しくはないが、体に害はなさそうな感じだ。飢えは凌げそうだ。そういえば、水もあった。



少し時間が経過してから、もう一度本棚を見てみた。



日本語、韓国語、中国語……おそらくタイ語、など何故かアジア系の国々が多い。



一応英語もあって、おそらく中学生、高校生の私はところどころが読める程度だった。



今の自分には、日本語力が足りない気がする。まずは国語辞典を読みまくろう。



私はRPGで装備を整えてから冒険に出るタイプだ。

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