リフレーミング~現代異能力✕異世界✕心理学✕女の子~

@yuga9142

第一章異能力者狩り編 第1話胎動



国を市民を守るために存在している警察組織。しかし、組織といっても一枚岩ではないのだ。近年突如として現れた特殊な異能を用いる存在、人間離れした現象を引き起こすため一般の警察や自衛隊では身に余る事から特別に組織された対異能力者チームというものが存在する。


そして今年から配属された少女であるヒカリはとある任務に当たっていた。しかし「くそ、逃がした!」等とまんまと犯人にしてやられていたのだった。




相手は一人にも関わらずとてつもない強さを誇っていた。次々に警官達の猛攻を掻い潜り撃破していく。警察は異能力者による事件が起きた際には主に民間人の救助や交通規制などを行う。犯人は今朝商業施設を破壊しそのまま建物の屋上から飛び降りると逃走を始めた。その後破壊に伴い生じた被害者を救急隊員などが救護していた時の事だった。再三犯人が商業施設に舞い戻り警官達を攻撃し始めたのだ。新人警官である竹田は足がすくんでうごけなくなってしまっていた。回りの警官達がやられてしまったことで最後の一人となった自分に犯人が向かってくる。竹田は必死に拳銃を向けながら声を荒げて威嚇する。




「お前の目的はなんだ?!わざわざ戻ってきて何のつもりなんだ!」




相手は竹田の顔を見るとニヤリと口角を吊り上げた。この表情を待っていたといわんばかりの顔であった。




「お前らのその顔だよ!俺は今までてめぇらに組伏せられるだけの雑魚だった。けどなぁこの力を手に入れてからはそんな心配する必要もなくなったって訳だ。今度は俺が!てめぇらを組伏せる番だってなぁ!」




「そんなことのために罪のない民間人を攻撃したのか」




「攻撃?そんな奴ら眼中にねぇよてめぇらに来てもらうために騒ぎを起こしたかっただけだよ。コイツらは運悪く負傷しちまった見てぇだけどな」




犯人はこちらの眼前まで迫ると胸ぐらをつかみそのまま竹田を持ち上げた。「グッ…」




そして苦悶の声をあげる竹田を地面へと思い切り叩きつけた。




「カハッ…」




肺から空気が放出される。そして拳銃も手を離れてしまった。苦しい、意識が飛びそうだ。




「おいおいもうのびちまうのか?他はまだ気概があったんだけどなぁ。」




「くそぉ…!」




倒れながら必死に立ち上がろうとする。






「いくら俺のスピードでもそろそろアイツがきちまうかもだしとどめをさすかな」






再び俺の胸ぐらをつかみ上げ俺の体を宙に浮かせる。そして犯人は片手を開き指同士を合わせてまるで刃物のような形を作り出す。実際奴の攻撃は刃物と同格の切れ味を持っていた。目の前で殺された同僚の光景が思い出される。竹田の目から涙が溢れる。自分がこれから殺されるという恐怖と警官としてなにもできなかったという無念が込み上げてきたからだ。




「天国ってもんががあるかを考えながら逝きやがれ」




犯人の手刀が喉元に直撃する寸前竹田の体が地面に倒れこんだ。竹田には何が起きたのか理解できなかった。




「どうにか貴方だけは間に合ったみたい。」




俺の眼前には自分よりも小柄な少女がいた。ワインレッドのブレザーに灰色のスカート。紺色の髪は肩当たりまで伸びていて美しい瞳が特徴的だ。まず思い浮かんできたのは学生。この場には全く似合わない存在。しかし竹田はこの圧倒的さからもうひとつの考えに行き着いた。




「まさかあの特殊組織」




「それは後でね、どうやら大分ご立腹みたいだから」




「ちくしょう、ちょっと遊び過ぎたか。」




男は少女を睨み付けると舌打ちをする。




「確かにアンタのスピードには驚かされたよ。位置情報が伝達された直ぐ後にはここに戻ってきてたんだもんね。お陰でうまく撹乱されちゃったよ。」




「おいおい何上から語ってんだよ今からやられるのはどっちかわかってねぇようだな」




「わかってないのはアンタの方だよ。」




「何」




その時には既に少女の姿は眼前から消えていた。




「バカな俺が見逃すはずがぁ…」






セリフをいい終える前に犯人は倒れこんでいた。




「はい確保。こういうの最近多いのよね。まともに能力も制御できないのに暴れまわる奴が…」






少女はため息をつきながら早々と手錠をかけてあんなに恐ろしく見えた犯人をあっさりと拘束してしまった。




「大丈夫?」




「はい…」




竹田はあまりに一瞬の出来事に理解が追い付いていなかった。次元が違いすぎるというのが正直な感想だった。少女は他の警官達の脈を確認するとこちらに戻ってくる。




「どうやら他の警官さん達はまだ死んでないなかった。アイツとんだ小心者だったみたい。やる気がないならやるなっての…後は私の仲間が直してくれるから安心して」




「ありがとうございます。」




「じゃあ私は、本部に報告しなきゃだから」




「あの!」去り際竹田は少女を呼び止める。何かベタな展開だが男はどうしても自身を救ってくれた人物の名前を心にとめておきたかったのだ。




「何?」




「せめて名前だけでも!」




少女は少し気恥ずかしそうに「私はヒカリ、対異能力者班第17支部のメンバーあなたは?」




「私は、竹田…竹田正義です!」




竹田は敬礼をしながら返答した。




「またどこかで会えたら良いね。」




「はい!」




少し蠱惑的な笑みを見せると少女は去っていった。竹田は横から呻き声を聞いた。そこには竹田の同僚がいた。




「木中!」




ヒカリと入れ替りで入ってきた人物に回復させられた木中が俺に気づく。




「お前がやったのか?」




「いや、俺は見てることしかできなかった。けどなヒカリさんに助けられて勇気をもらったよ」




「そうか…」




木中は安堵したのか再び目をつむってしまった。そして俺は立ち上がると他の救護者の元へと駆けていくのだった。










「今回はしてやられたな」




支部に戻ると声の低い女が話しかけてきた。




「さすがに任務以外の事案も関わってきちゃあね」




私の回答に女が眉を潜めた。私は椅子に腰かけて思い切り伸びをする。支部は都市の至るところに点在していて基本的に二階建てだ。寝泊まりも出来るし風呂場もキッチンもついてる。支部によって設備の違いはあるものの苦労はしていない。寧ろ第二の自宅と言った感じだ。だから今座っている椅子もとても思い入れのある品だ。といっても差程月日は経っていなかったが。




「今回の商業施設襲撃事件以外にも近くで事件がおきてたの。その対処に時間食われちゃった。」




「そうだったのか本部にはその件も報告しておく。」




女は淡々と報告を受け目線をデスクにあるパソコンに向け仕事に戻る。




「最近多いよなまったく俺たちだけじゃこの担当区は捌ききれなくなってきたな」




すると一人の男が口を開いた。室内なのにサングラスを掛けているこの如何にもな男は私の先輩で先程の女性は私たちのリーダーである。




「アイツらが出てきてから力を上手く使えない野蛮な能力者が増えちゃったよ。」




アイツら というのは20年ほど前に発足したらしい謎の企業である。目的は一切不明。そして“らしい“というのは企業の本丸がいったい何処にあるかの検討すらついていないからだ。はとはいえ分かっている事もあって、それは方法こそ分からないがその人物に秘められている潜在能力を引き出し異能力として扱えるようにすることが出きるらしい。それによって劇的に能力者が増える事となった。しかも基本的に先のような自己中なパターンが多いため何らかの人格強制を行っているのではないかという黒い噂も流れている。私達本部としてはこれ以上統制できない能力者の発生を防ぐために一度大規模な摘発を行おうとしたものの失敗に終わり現在も依然として互いの関係はバチバチなのである。元々は本部の仕事はそこまで多忙ではなかったらしいのだが今の環境からしてどう考えてもそんな時代があったとは想像しづらい。何しろ私は入ってからまだ一年程度の新米なのだ。その割に警官の前でいきがってしまったのはどうか突っ込まないで頂きたい。




「せめて能力の発現方法が分かればな」




するとサングラスが再び口を紡ぐ。確かに手段が分かればそれによりこちらの人員を増産し対応の幅を大きく出来る。能力者は簡単に駒として配備出来る訳ではない。素養がある人物をスカウトしたりするなどして養育機関に預けそこでいくつかの過程を終了した者にのみ都市周辺に点在している各支部にチームとして割り振られるのだ。だから基本的にチームメンバーは同期の場合が多いのだが私の卒業した年は卒業生が異様に少なくその結果空きのあった支部の補填枠としてこの個性的な面子が蔓延る17支部に配属されてしまっていた。とはいえ実際皆優しく今では満更ではなかったが。




「しかしな、能力を使えるようになった奴らに聞いてもいきなりだった。としかいわないんだろ?」




「そうなんだよね」




私達は以前能力を発現させて貰ったという人物にアプローチをしたことがある。




しかし相手は「良く覚えていない。だがいきなり捕まって気づけば能力を使えるようになった。」などと要領の得ない発言をしていたのだ。




「何か道具が必要となればそこの流通を止めたりで防げるとも思うけど、道具を使ってたとしても日常用品で代用は効かなそうだしね。いまはどうしようもないわ。」




それに対し幼い声で受け答えしたのはゴスロリにピンク髪が特徴の如月明日香である。ここで余談だがが私たちはプライバシーの保護だとかでコードネームを使っている。私の場合はヒカリだが、それは本名ではない。ややこしいが私の養育時代に教官がつけてくれた名前なので何となく気に入って今もコードネームとして利用している。そしてそこで欠伸をしているサングラスは本当にサングラスというコードネームを用いている。自己紹介の際に「俺はこのチャームポイントのサングラスで十分だ」などと訳の分からないことを言っていたか。明日香に関しては名乗る必要がないと本名を公表していて一応規則だと伝えるとこの名前が気に入ってるからとずれた回答をされてしまった。しかし実力は確かなのである程度のことは認められていた。そしてあそこに座っている女の名前はリーダーのルナ。理由は単純明快耳に月のイヤリングをつけているからだった。そして、私達のような支部が各地に点在しており本部からの連絡を受けて現場に向かうのが基本だ。本部は警察組織と連携しており彼らから連絡を受けた後現場付近の能力者達に指令を出す仕組みだ。私が先程当たった事件も、その一環。本来であればチーム全体として行動するケースが多いが支部のリーダーであるルナの指示で余計な人員を割かないために一人で向かえとのお達しがあった。まぁ裏を返せば実力を認められていることにもなるため悪い気はしなかったが。


サングラス達との会話でもあったように、最近例の組織の動きが活発になっている気がする。そのため仕事も増え仮眠すら取れない事もざらなので、いい加減に人員を増やす政策を施行して欲しいものだ。


よって最近は事務所の2階部分に泊まり込みしている。無論支部を運営しているルナも。とはいえ明日香とサングラスは一々自宅に帰っていたが、家族の事もあるので、とやかくは言えなかった。つまるところ面倒くさがりのルナと二人きりというわけだ。特段嫌と言う訳じゃないが、ルナは独特のオーラがあるため何時まで経っても慣れなかった。


というわけで長々と語ったが話を戻すとしよう。




「今は大人の話をしてるんだお前は黙ってろ。」




明日香に文句をいったサングラスだったが20cmも差がある少女になんなく投げ飛ばされる。「ゴバッ」サングラスのサングラスが外れ床をスライドする。へたりこんでいるサングラスをみて明日香がざまぁないわねとさらに煽る。本来サングラスは明日香をイジるような事はないのだがある理由でストレスがたまっているのか明日香に度々突っかかっていた。ようはただの構ってちゃんである。しかし何故か私には突っかかってこなかった。私はもしかして怒らせたらヤバいタイプだと思われてるのかもしれない。




「おい」と突如ルナが黙るよう声のトーンを低くすると同時二人はようやく黙った。私はサングラスに手を伸ばしてたたせて上げると。椅子に座らせる。




「すまねぇな」




サングラスは体の埃をはらいながら礼を言う。端の方からチッと舌打ちされた気がするが無視しておく。




「そういえばサングラスって今日呼び出しされてたんじゃないのか」






パソコン女がサングラスに伝えるとサングラスは口を開けてフリーズしてしまう。




「やべぇ忘れてた。すぐ行かなきゃでもこっからじゃ本部までは遠すぎる。えーとヒカリさん?」




サングラスの視線が私に突き刺さる。ニヤリと笑った私は手を出して




「では今回もツケってことで。」




「ぐ」




「利息なしでもありがたいと思ってよ。てかそんな態度取るって事は私は必要ないみたいだね。」




羽振りの悪い客に対して私が立ち去ろうとすると




「あー!払います!払います!払わせていただきます!」




サングラスはヒカリの手に何枚目かも分からない契約書を手渡す。




「まいどあり。じゃあちゃんと手握って」




サングラスが再び私の手を握った。その瞬間事務所から二人の姿が消えたのだった。




ヒュンヒュンと適格にビルが隣接している都市で移動を繰り返す。移動といっても私の場合は間の距離を無視している。簡単にいうとテレポート、一定の距離を飛び越えて瞬時に移動出来る異能力だ。しかし、一度に150m程度が限界なのでこうして何度も跳び続ける必要があった。しかも一回テレポートした後は2回目以降地に足を着いている状態じゃないと現状私は能力を使えないという制約つきだった。しかしテレポートに関しての人数制限はない。それに基本的に私に掴まっての移動が基本だが私に触れている人間を別の人間が触れても効果は発動する。だから私は良く都合の良い運び屋扱いとなっていた。とはいえ、満足な仕事も回ってこないし今のポジションは手持ち無沙汰に待機するよりもマシではあったが。


私たちが向かっているのは私たちの本拠地である本部だった。この都市は島国である国の中心とも言える場所であり人々の往来も大変活発だ。無論能力者達も最も入り乱れる場所でもある。そして我らが本部は都市内部の特別区のど真ん中に立っているビルである。特別区というのは本部を守るために直属で選ばれた6つの支部が各場所に点在しているエリアの事だ。当然本部一帯は周辺地域よりも格段に狙われやすい。まぁ私たちは下部の支部のため雲の上の存在ではあるが。




「あとなんふん?!」




私はサングラスに時間を確認した。サングラスは私と手を繋ぎながら時計をみて




「あと1分だ!間に合うか!?」




と大声で急かしてくる。しかし後1分しかないとなると間に合わない。




「しっかり掴まってて!」




だから私は体を捻り横のビルに向かって跳ぶ。




「うわぁ!」




とサングラスが目の前のビルに間抜けな声をあげる。しかしビルにぶつかることはなく壁を貫通して内部に入るそして立て続けにテレポートを発動し屋上まで移動する。私は屋上を囲っているフェンスギリギリまで行くとそこでテレポートを発動、しかし制約の関係上2回目以降は地に足をついていなければ発動不可能。このままでは床に激突してしまう、




「ちょっとごめんね」




「え?」私はサングラスを自分の靴の裏へとテレポートさせた。「ごばぁ!」サングラスの苦痛の声が漏れるが文句は後だ。2回目のテレポートを発動し美容院の電光掲示板上にテレポート。そしてテレポートを再度発動し地上まで降りたあと落ちてくるサングラスにタイミングを見計らいテレポートをする。テレポート先でサングラスをキャッチそのまま地面へと着地する。サングラスは放心状態になっていた。頬をペチペチしてからサングラスを正気に戻しなんやかんやでとうとう本部にたどり着くことができた。




「どうにか間に合った!」




「間に合えばいいってもんじゃねぇからな!死んだらどうすんだ!」




怒りを露にするが時間がないのでサングラスはそれだけ言うと入り口に飛び込んでいきそのまますぐ見えなくなってしまった。このまま私が本部のなかにテレポートしなかったのはしなかったのではなく出来なかったからというのが正しい。本部には能力者用のジャマーがあるため迂闊に侵入すると能力が弱体化し、他の能力者に捕縛されてしまうのだ。一度自分も引っ掛かって説教を食らった。




「アイツら怒ると話長いんだよな規律規律って私たちは従順な操り人形じゃないっての」




ぼやきつつ一度帰ろうと思ったがせっかく来たのだし中に入ることにした。サングラスの呼び出しの件が気になる。送ってやったのだからそれを知る権利位あるだろう。私は本部の入り口に向かった。入り口前に制服姿の見慣れた奴を発見した。




「今日もお疲れ様でーす」




私に気づくと相手は暑さで煽っていた手を速攻引っ込めた。




「なんだ17支部のか」




「どうせなら支部じゃなくて名前で呼んでほしいな。」




ヒカリの態度に相手はめんどくさそうにしながら




「100を越える支部がある中で何故貴様の名前を覚えなければならないんだ。私は多忙なのだ、いったい1日何人がここを通ると思っている?不審者の見回りやIDカードの提示等さまざまな仕事があるのだ。」




「ちょっと絡んだだけじゃん」




私が茶化すと相手は歯をギリギリとならし始めた。「やべ」私はとっととIDカードを提示すると許可を貰って入り口横にある機械にカードをかざす。するとピピと認証を完了した音がなり、そして中に入っていった。本部への入退室はこの正面玄関でしか行えない。一度非常口を探したりしたのだが一切見つからなかった。厳格な警備体制の一方災害時は一帯どう対処するのだろうか。




「危ない危ない。」




私は息を切らしながらフロントまで駆けていた。あの警官も能力者なのだ刺激しすげて味方に病院送りにされたらたまったもんじゃない。




「まぁ私が悪かったけどさ」




私はこの時期に少し調子に乗ったことを反省する。本部の中には入り口にいた奴と同じ制服をきた者が多数いた。以前よりも人員が多い気がする。やはり能力者を人為的に作る例の団体が関わってるのだろう。ちなみに彼ら彼女らはコードネームにポリスという文言が必ず入っている。識別方法はポリスA1などアルファベットと数字の組み合わせで表示する。あの入り口の子はポリスB3だ。なので本名は知らない。いつの日か気になって個人情報を聞き出そうとしたが取り合ってもらえなかった。「さてと」私は指令室まで移動することにした。おそらくサングラスはそこにいると思われる。本部の内装は別に特段近未来的なものではなく普通のオフィスビルといった感じだ。エスカレーターで最上階まで上がる。そして指令室に繋がる通路に出た。とりあえず指令室まで向かってみよう。本来は用事がない限り立ち入り禁止なのだがまあチームメンバーに会いに行くというのも立派な理由になるだろう。おそらく。しばらくしてから指令室へ繋がる扉にたどり着いた。ドアノブを捻ろうとしたところでバッタリとサングラスにあった。サングラスは私の顔をみるや否や顔をパッと輝かせいってきた。




「俺の時代がきたぜぇ!」




「状況が読み込めないんだけど説明してくれない?」




私が説明を求めるとサングラスは自慢げに


「ついに解除されたんだよ!これでようやく活動が再開できるぜ」と騒ぎ立てる。






私はそれに胸をなでおろし「これでアンタから今までの借りを返して貰えるよ」と安堵した。




解除というのは以前サングラスはとある任務に当たった際に違反行為をして謹慎処分となっていた。そして報酬は任務達成により支払われているため私がサングラスの生活費を立て替えていたのだった。だから事あるごとにサングラスにツケとして料金をしっかり滞納させている。初めは明日香とリーダーにも頼んだのだが無理と一言であしらわれてしまった。私のチームは何故こうも協調の精神がないのだろうか。本部も能力さえ使えれば採用するというのは如何なものかと思う。「あー」すっかり忘れていたのかサングラスが頭を搔く。




私がサングラスを睨み付けると「ちゃんと返すって!」と焦りながら一歩後ろに退いて否定する。




「まっそれならいいんだけど」




これは当分帰ってこないような気がするが取りあえずは納得しておく。ぶっちゃけカツカツなのでとっとと返してほしいというのが本音であったがそれは心に留めておく。私はサングラスにここに居続けても仕方ないので移動の旨を伝えようとした。そのときの事だ。突然着信が通路に響いた。どうやら私にらしい、ポケットから端末を取り出し耳に当てる。するとリーダーからすぐに戻るようにと連絡を受けた。電話を切るとサングラスが、内容を聞いてくる。簡潔に返答すると私たちは建物からでてテレポートを発動し急遽本部へと戻ることとした。






事務所に戻ると明日香が「遅くない?」と不満を漏らす。




これでも全速力でテレポートを駆使したのだが。しかし返答する間もなく私たちはリーダーに催促されデスクの前に整列した。リーダーはパソコンを見つめたまま




「本部から、至急25支部と合流し任務を遂行せよとのことだ。詳細は端末に送信した。」




言い終えるとリーダーは立ち上がり本部に用があるからと先に出ていってしまう。本来リーダーはチームメンバーを監督するのだが内のリーダーは任務に同行するパターンが極度に少なかった。理由を聞いても




「お前らだけで十分だ、それに私がいても足手まといなだけだ。」




と片腕と片足の義手義足を見せびらかしながらあしらわれるのがお決まりとなっていた。義手義足については昔にどじを踏んで負傷してしまったらしいが、これ以上は口を割るつもりはないと黙秘を貫いていた。リーダーが消えたのを確認したサングラスが突然




「これは本部から俺の実力がなまってないか調査するための任務だな?」




と当たりをつけ始めた。そんなサングラスのケツに明日香が蹴りを入れる。「ギヒィ!」と尻を押さえながら奇声を発した。




「いきなりなんだよ!」




明日香にキレるサングラスに対して明日香は


「25支部と合流しろと言われたじゃない。私たちがチンタラしてたら向こうに迷惑がかかるの。あんたの余計な妄想は終わってからにして」と口を開く。




正論を言われサングラスが萎む。それを無視して明日香は私に




「詳細は私がある程度読んだから取りあえずヒカリは3km程先の生体エネルギー研究所に向かって。詳細はテレポート中に話すわ」




と伝え私に触れる明日香は萎んでいるサングラスを蹴りのモーションで脅すとサングラスは急いで私に触れる。サングラスは先程ふざけていたように見えたが私にはそうは思えなかった。むしろ先程の遅延は何かを忌避するものに感じた。なぜならサングラスと25支部は…「早くする」明日香に急かされたので思考は途切れる。確かに今は明日香の言う通りだ。「じゃあいくよ」私はテレポートを発動し25支部の待つ場所に向かう。




「それで詳細なんだけどね」住宅街を俊敏に移動している中明日香が情報を伝える。




「この先の生体エネルギー研究所が何か企んでいるという情報を本部がつかんだの」




「というと」私が聞き返すと明日香は額に汗を浮かべながら「本部に設置されているジャマーの突破よ」と口にする。




「でも、ジャマーが設置されているのは本部の中…そこは能力が封じらられちゃうから自分から檻に入っていくようなものだと思うんだけど」




私の疑問に対し明日香は「本来はそうなんだけどね」と前置きしてから




「だから能力者は今まで本部に手を出せずにいた。無能力者なら尚更ね、でも奴らは内部ではなく外部からの破壊を試みようとしてるの。」




「外部?そんなの尚更…」私が反論しようとすると明日香は話を遮った。




「そう本部の外周いったいは警備が多いし、壁を破壊しようなんてもっての他、ポリス達の能力で建物の耐久性はとんでもないことになってる。外よりはむしろ内部の方が襲撃出来る可能性は高い、でしょ?」




言おうとしたことを言われてしまい私は頷くしか出来なくなってしまった。「じゃあいったいどうやって」明日香は険しい表情を崩さずに質問に答える。




「その答えが今向かっている生態エネルギー研究所と関連してるわけ」






「おい、そもそも生態エネルギーってなんだ」




とサングラスが会話に割って入る。どうやら移動中端末で詳細を確認していたようだ。しかし用語が理解できないため読解をギブアップしたようだ。「言い質問ね」明日香はサングラスを褒めてから「連作障害って知ってる?」という問いを投げ掛けてきた。二人が当然知らないことを知っての問いだったため明日香は待つのも早々に語り始める。




「同じ土地で作物を育てていると次第にそこで作物が作れなくなることよ。これを解決するために研究所は未知の科学エネルギーがあると仮定してそれを畑に戻して連作障害を克服したの。」




話を聞いてもいまいちなサングラスが目線を上に向けながら




「それがどう関係してくんだよ」




と明日香に投げ掛ける。




「確かにね、でも最近アイツらは農作物以外にも手を出し始めたの」




明日香の話を聞いてピンときた私は「異能力者のことだね」と返答、しかしサングラスはまだ理解できていないようなので解説してやる。




「おそらく異能力者の未知のエネルギーを抽出しようとしてるんだよ」と考えを纏め返答する。




それに対し明日香は頷き




「私たちでも異能力の本質はまったく理解できてない、でもひとつだけ分かることがある。」




「莫大なエネルギー…まさか!」




合点がいったらしいサングラスが声をあげる。耳を塞ぎながら明日香はまとめる。




「奴らはそれを用いてジャマーの範囲外からエネルギーを射出してそこからの一点突破を狙ってる訳ね…」


どうも上条さとりです。次回以降からはキャラクターの掘り下げを考えております。 一人でも面白いと思って頂けるように努力して参ります。


ということで今回はペンを置かせて頂いてまた次回お逢い出来ることを願っております。

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