第21話、ペット4



 お互いに首を締めあったアネウットとスチールだが………


 スチールがアイアン家血縁関係者であると言う言葉。

 アネウットはそれに驚愕した。

 

 驚いたアネウットはスチールの首から手を離す。


「ゲホゲホ。女のクセに馬鹿力め」


 咳き込むスチールもアネウットから手を離し距離をとる。

 そして………


「気いつけろボン。その女。お前とアイアンのクソ馬鹿使って、親子丼を楽しみかねんぞ」


 首をしめられたことが悔しかったのか、スチールは、そんな事を言い出した。


「親子丼ってなんや?」


「親子丼ってのはな〜、夜のベッドで一度に親子同時に楽しむ事だ」

「フッァ?」

 なんやそれ?


「そんな気持ち悪い事を知ってる人が、私の若様に話しかけないで下さい。キモい」

「キモいとか言うな! 俺の弟を妊娠した無課金妊婦のくせに」


「無課金妊婦ってなんや?」

 親子丼とか無課金妊婦とか

 聞いたことのない言葉が多くて、わけわからんわ。


「そんな事よりも、スチールさん。アナタの遺伝上の父親と弟と言うのはどういう事です?」

「ん? 俺はアイアンが浮気して出来た、認知されてない私生児なんだよ」

 スチールの告白。


「え! ほ、本当に?」

「ほらよ。アイアン家の紋章」


 そう言ってスチールは左手を掲げてみせた。

 その手には紋章が光っていた。

 父上と、母上の長男ワイと、次男。

 ワイ家三人とお揃いの、アイアン家の紋章。

 アネウットにも見覚えがあるはずや。


 ちなみに母上の三男はアイアン家の紋章を持っていない。

 代わりにプラチナム家の紋章を持っとる。


 長男ワイ、ワイ家で継承出来る全ての紋章

 次男、アイアン家の紋章継承

 三男、プラチナム家の紋章継承

 スチール、アイアン家の紋章継承


 頭の良さは………

 スチール、三男、次男、ワイの順番や。


 戦闘力の強さは………

 ワイ≫三男≧次男>スチール

 てとこやろな〜

 スチールは正規訓練を受けとらんから、アイアン家の誰よりも弱い。


「そ、それじゃあ本当に、スチールさんは若様と兄弟? 若様の兄上なのですか?」

「兄弟やないで〜」

「え?」

 ワイの言葉に驚くアネウット。


「正確には、俺はアイアンの隠し子ですらね〜からな」

「え〜と? 意味がわかりませんが?」


「アイツは俺を認知しなかったからな。認知されてないと。たとえ血が繋がってても、この国では貴族の兄弟とは言えね〜んだわ」

「そ、そんなぁ」

 アネウットは反射的に自分のお腹をおさえた。

  

 アネウットは知らなかったのか?

 この国では貴族に有利な法律がある。

 スチールはその被害者や。


 アネウットのお腹の子供も………

 本来そうなるはずやった。


 何故か母上は強引にワイの子供にしたが………

 アネウットの子供は、ワイが認知する。

 だから血はつながって無いけども。

 ワイの、プラチナム家の子供になる。


 あれ? 違うか?

 父上の子供やからワイの弟や。

 アイアン家の血はつながっとるから、間違ってないのか?


 でも、プラチナム家の血は入っとらんのにプラチナム家の子供になる。

 ワイにはわからん。

 ………何もわからん。

 こんなの許されるんか?

 

 ワイが血のつながり問題に悩んどると


「だからおれぁ………アイアンの奴を、認知拒否した復讐の為に、ぶちのめそうと思ってな」

「ええ〜! 復讐って!」

 驚くアネウットを気にせずにスチールは


「ここまで来たまでは良かったが、バカ親アイアンに挑んで、返り討ちにあってしまって………」

「父上強いからな〜。その時ワイ君と出会った」

「そうそう。懐かし〜ぜ」

「負けたスチールを、ここにかくまって、ついでに、ペットの世話を頼んどるんや」


「「な〜〜〜〜〜〜」」

 そう言って、ワイ君とスチールは二人で唱和した。


「し、知らなかった。アイアン様が私以外にも………」

 何やらショックを受けてるアネウット。


「たぶん。まだ愛人やら他にもいるぞ」

「えぇ〜!」

「たぶん認知して無い隠し子。 いや、隠し子でもね〜俺みたいな子供が、いっぱいいるぞ。アイツ、屑だしアホだし」

 父上アイアン、アイアン。

 実の子供に凄い言われよ〜やな。


「そんな汚い言葉を、若様の遺伝上の兄が使うんじゃありません」

 アネウットがスチールをたしなめた。


「………まぁ俺は育ちが悪いんだよ。アイアン、アイツが屑なのも本当だしなぁ。まぁ………でも………注意してくれてありがとう。言葉使いには気をつけるよ」


 素直に謝るスチール。

 その様子に少しアネウットは戸惑い、毒気を抜かれる表情をした。


「………え〜と、そのあの………そうだ! 当主様は、この事をご存知なのですか?」

 アネウットの疑問。


「母上? 知るわけないで」

「プラチナム家当主が知ってたら、アンタの事で追い出される前に、アイアンの野郎は追い出されてたかもな」


「何故当主様に相談しなかったのです?」

「ん〜〜〜? 単純に思いつかなかった」

 あっけらかんと答えるスチール。


「スチールも父上の血をひいとるだけあって、アイアン一族同様、やや脳筋や。頭のネジは外れててやや優秀やが、大雑把にすぎるんや」


「おい待て、ややってなんだ! 俺はオマエラよりは上等の頭しとるわ。一緒にするな。俺は天才だ!」

「ワイは無能や!」

「ぷ………自分で無能言うなよ」

「「アハハハハハハ」」

 ワイとスチールは一緒に笑う。


 なんとなく

 スチールの天才発言に対抗したくなったワイは、天才アピールに対抗

 自分は無能やと名乗り出た。


 そしてなんや面白くなって、スチールと唱和してからゲラゲラ笑う。

 ホンマにスチールとは、気が合うでな。

 何か楽しいんや。


◆◆◆


 恋愛とは………

 賢いものには夢

 愚か者にはゲーム

 金持ちには、良い暇つぶし

 貧乏人には、悲劇だ


 しかし真実の愛を求めるのなら

 悲劇から見つけるのが1番簡単だから面白い。

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