第15話、カニ味噌脳細胞の迷推理


 ワイの哺乳瓶が壊された!?


 は!?

 もしかして………

 既にして子供偽装工作を誰かが見破った?


 母上のよくわからない計画を

 よくわからない誰かが邪魔しようとして、

 よくわからない理由で

 ワイの哺乳瓶が邪魔になって壊した?


 もしや………

 スパイが入り込んで暗躍しとるのでは。


 ワイは戦慄した。

 ワイはいったい………

 なんの事件に巻き込まれとるんや?


 ワイは急いで食堂へ向かう。

 食堂には母上、弟共とアネウットがいた


 ワイ君は怒っていた。

 ワイの大切な物が奪われた。


 ほかの誰かには価値が無くても、ワイにとっては宝物だった。

 ワイの幸せが壊された。


 許してはおけぬ。

 絶対に!?


「誰が、ワイ愛用の哺乳瓶を壊した?」


 犯人はこの中におる。

 ワイの物を壊すのは、過去の経験から、大抵が家族の誰かや。


 つまり………スパイは、この中におる。

 ワイの怒りの発言に母上が………


「私は、この子が物心ついた時から。葛藤してました。この世に、この子を解き放って良いものか」

「ファ?」


 なんか母上は難しい事を言ってる。



「しかし今、決心がつきました」

「何をや?」


「哺乳瓶で、お茶を飲むような馬鹿息子」

「ファッ!?」


「哺乳瓶を壊されて、怒り狂う馬鹿息子」

「ファッファッ!?」


「そんな息子を。この世に解き放って、言いわけがありません!」

「ハハハ、さすが母上や。オモロイこと言うなぁ」


 ワイは余裕を持ってそう返す。


「………今の何が面白いのです?」

「生まれてきた時点で、ワイは自由やで」

「………!!!」


 誰にもワイ君を止められん。

 ワイを止められるのはワイだけや!


「母上がワイ君を、この世に解き放ったんやで〜。既にして遅いで」


「!!! わ、私は何て罪深い事をしてしまったのかしら?」 

「ふぁ? 罪ってなんや? ワイにだって常識くらいあるで」


 絶望したかの様に、大げさに騒ぐ母上。

 母上は大げさ過ぎなんや。

 人生を深く考え過ぎや。


 なるようにしかならんと、無能なワイ君は身に沁みて知っとる。

 だが母上は………


「私の元に産まれてこなければ、少なくともプラチナム家の紋章は、息子のアナタに引き継がれなかった」

「ふぁ?」


 そやけども、それが何や?


「その分、もっと罪と害は少なくて済んだのに………」

「害?」


 え? 

 母上? 今、なんと言った?

 罪と害?


 何や母上?

 誰の事や、それは?

 ワイか?


『拝啓母上様!

 ワイ君。

 また何か

 やっちゃいましたか?』


「と、当主様。いくらなんでも、それは言い過ぎでは………若様が、可愛そうです」

「そうや。母上は、たまにして酷いで」


 全く、


「黙りなさい貴方達」

「罪と害ってなんや?いらつくで。ワイ君が可愛そうや」


 ワイをかばうアネウット。

 ワイ君は、予備の哺乳瓶にお茶を注ぎながらしゃべる。


 すると

 一瞬で氷の塊におおわれる哺乳瓶。


 ファッ!?

 なんやこれ?


 次の瞬間に哺乳瓶はバラバラに壊れた。

 なのに何事も無かったかのように母上


「アネウット貴方もです」

「当主さま。私は若様を………」


「いえ、良いです。わかりました」

「ナニがわかったんやろ? ワイにはわからん。何もわからん」


「………どうやら、私は貴方達2人の教育を、まちがえたようですね。それがわかりました」


 ニコリと笑う母上。

 笑ってはいるが………

 母上の額には、青筋が浮いていた。


 バキリ

 とワイの前にあった食器が壊れる。

 ファッ?

 

 母上の魔力や。

 母上、目にも止まらぬ早業魔力で、壊しおった。


 つまり………

 ワイの哺乳瓶を壊した犯人。

 スパイは母上やったか。




 ワイの脳味噌の代わりに、カニ味噌がはいってると評判の脳細胞は、


 母上の訳のわからない計画を

 阻止する為に送り込まれたスパイは、

 母上自身だったと言う結論をだした。


 ファッ!?

 ………どうしてこうなった?

 何処で間違えた?

 


◆◆◆



 どれ程、異性にモテる人間でも

 モテない時がある。


 例えばそれは、異性に興味の無い

 同性愛者の群れの中にいる時だ

 

 モテるはずの人間でも、

 根本的な勘違いをしていればモテない。



 

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