第276話
『俺が知ってる渚は常識があって、心がめちゃくちゃ綺麗で、子供みたいに純粋で。
愛想は良いほうじゃなかったけど、愛されて育ってきたことが節々から見える人間でした。
だから今この瞬間に感じていることだけで判断せずに、今まで見てきた渚を信じてやってください』
譲の言葉をそのまま口にしてくれた父の目が潤んで見えた。
迎えに来た父と母が、私の想像と違って落ち着いた様子だった理由はこれだったのか。
何となくそんな気がした。
「状況が呑み込めず半ばパニックだった私達は彼の言葉に救われたんだ。
渚をそんな風に思いやってくれる人間がいることに心の底から感謝した」
父の表情があまりにも穏やかだったから私まで涙ぐんでしまう。
まさかこんな形で泣かされることになるなんて思いもしなかった。
自分の犯した過ちを悔いて、負い目に感じて生きていくしかないと覚悟はしていた。
そんな中で惨めさに挫けずいられるのは、やっぱり譲という存在のお陰だと思う。
迷いもせずに香港行きを決めた私は冷たい女なのかな。
一度も譲の顔を過ぎらせなかったのは薄情な人間だからなのかな。
でもね。躊躇いはなかったから。
結論を出すのに譲の存在を理由にする必要はなかった。
寂しさはあっても、不安なんて言葉は私達には無縁だったから。
積み重ねた時間。
魂で感じた繋がり。
それだけあれば未来へ繋ぐには十分だと思ったの。
譲も同じだといいな。
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