第237話
取引や圧力が当たり前に飛び交う世界で長い間やってきたんだ。
思い描く理想が現実からかけ離れていることなんて知ってるつもりだった。
だけど今ここにある現実はあまりに理不尽で、芽生えた感情を上手く表現することすら出来ない。
渚に逮捕状が出ていなかったこと。
電話を返すなんて口実があっさ認められるほど自由が認められたこと。
自宅や学校ではなく、明け方の街で事が起こったこと。
その全てに理由があり、妙に際立った不自然さが繋がった。
「どうせ直ぐ帰れるはずだ」
絶望のどん底に落ちた俺に刑事が言う。
その意味を理解できず顔を上げると、俺より先に一世が食いついていた。
「直ぐに帰れる?」
耳にした事をそのまま受け入れる癖は未だ抜けない。
渚はすぐに戻ってくる。
絶望の中に見出した微かな光に胸を撫でおろした。
直後、自分の甘さを思い知ることとなる。
言葉の裏に隠されたもの。
理想と現実のギャップを垣間見た気がした。
「親戚筋に警察庁の上層部の人間がいるんだと。俺らが汗水垂らして辿り着いた矢先にこれだよ。やってられないね」
実を結ばない仕事に納得いかないのか、刑事は矛先のない苛立ちを嫌味っぽくこっちに吐き出す。
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