第225話
メインストリートまでたった数十メートルだというのに、渚はいつになく足取りが重かった。
普段は周りに目もくれずスタスタ歩くくせに、今日に限って遅れをとっていて、そんな渚を気にかけながら前を歩いた。
声を掛ければ、遅れを取り戻すように歩調を速める。
俺はそれを確認してまた歩き出す。
いつもとは何か違って。でも深く考えるには至らなくて。
そんなことを繰り返してるうちに大通りに出ていた。
遅すぎるぞって捲し立ててやろうかと再び振り向いた時だった。
目に飛び込んだ普通じゃない光景に瞳孔が大きく開いた。
スラックスに野暮ったいブルゾンを着た数人の男が渚を取り囲む。
間から僅かに見えた渚の表情は何かを悟ったかのように冷静で更に不安を煽る。
異様に跳ね上がる心拍数に恐怖を覚え、無意識に両手を強く握りしめていた。
「……おい―――っ…!!」
恐怖、不安、危機感。言葉では尽くせない感情が混ざり合い。
咄嗟に腹の底から搾り出した声は自分の声じゃないみたいだった。
血の気が引いて心臓をえぐり取られるような感覚に襲われる。
次の瞬間、腕を力強く捉まれ動きを抑制された。
本能的に駆け出そうとした俺を察知した一世が驚くほどの瞬発力で制したからだ。
「馬鹿、お前は行くなっ、」
「何言ってんだよっ、渚が―――っ」
「分かってる!分かってるから行かせらんねえんだよっ」
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