第30話
本当に今日じゃなくて良かったの。
ちょっとした思いつきで、私にとっては大したことじゃなかった。
なのに譲は違う受け止め方をしたらしい。
次の日の夜、マンションのエントランスに車を着けて私に今すぐ降りて来いと呼び出した。
慌ててクローゼットの一番手前にかけていたジーンズを穿き、ロングカーディガンを羽織って家を出た。
窓の外から車を覗くと、タバコをふかした譲が手をこまねく。
助手席に滑り込むと待ち構えていたかのように車はマンションの前から走り出した。
「え、どこ行くの?約束は?」
「断った」
そんなサクッと言われても理解できない。
瞬きを忘れて目を大きくする私を見て、譲は煙草を咥えながらご機嫌に笑う。
「行きたいとこあるんだろ?そこ行こうぜ。昨日言ってたじゃん」
「その為にわざわざ来てくれたの?本当にいつでも良かったんだよ、」
「今日だって思ったら今日なんだよ。思いついたことに意味があるんだって」
呆れた。
友達との約束後回しにしてまで現れるなんて。
それでなくてもツアー前で時間に追われてるのに。
「何だよその冷ややかな視線っ」
「忙しいくせに。無理することないのに」
「遠慮してんの?」
遠慮とかそんな可愛いものじゃない。
急を要することじゃなかったから予定を変えさせるのは気が引けるだけ。
「俺が今日って決めたら今日なんだよ」
ハンドルを離した手が意地悪く鼻をつまみ上げる。
手を払って視線を隣にやると、譲のサングラスに映った私は微笑んでいた。
「ありがとう」
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