ランク無双～Cランク父とA⁺ランク息子の野球頂点への挑戦～

笑う門

第1章　Cランクの男とA⁺の星

西本茂雄にとって、人生は「どうでもいいゴミ溜め」だった。

超ランク差社会――この世界では、人が生まれた瞬間に遺伝子を解析され、「ランク」が決まる。A⁺からFまで、才能と能力が数値化され、それによって全てが決まる社会だ。茂雄はCランク。平均以下。特別な頭脳も、優れた体力も、芸術的センスもない。ただ生きているだけの存在だった。

彼の日常は単調だった。朝、薄暗いアパートを出て、工場へと向かう。ベルトコンベアの前で部品を組み立て、昼休みに安い弁当をかき込む。夕方、疲れ果てて家に戻り、缶ビールを飲んで寝る。それが繰り返されるだけの日々。

「Cランクなんて、そんなもんだ」と茂雄は自分に言い聞かせていた。夢を見るなんて、Aランク以上の特権だ。自分には関係ない。

だが、そんなゴミ溜めのような人生にも、一つだけ光があった。妻の沙夜だ。彼女もまたCランクだったが、茂雄には天使のように見えた。優しくて、穏やかで、笑顔が綺麗だった。

二人が出会ったのは、工場近くの安酒場だった。酔った茂雄が絡んだ相手が沙夜だった。

「なぁ、お前、Cランクのくせに何でそんな偉そうなんだよ」と、わけのわからない文句をつけた茂雄に、彼女は静かにグラスを差し出した。

「あんた、もっと面白い話はないの？」

その一言で、茂雄はなぜか心を奪われた。そこから始まった付き合いは、貧しくとも温かいものだった。結婚した後も、生活は楽にならなかったが、沙夜がそばにいるだけで十分だった。

そして、去年の秋、沙夜が妊娠した。

「子供か……少しはマシな人生になるかな」

茂雄は初めて、希望らしきものを感じていた。だが、その淡い期待は、すぐに打ち砕かれることになる。

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