第6話

「麗、髪切ったんだな」


 不意に准の手が伸びてきて、切り立ての髪にそっと触れた。


「そんなことしたら、彼女が焼いちゃうよ」


 麗子は伏し目がちに言った。


「だよな」


 髪から手を離した准は、気まずそうに額を掻いている。

 一刻も早くこの場から立ち去りたいという思いが、麗子の頭の中を埋め尽くしていた。


「准君、元気そうで良かった。じゃあ、またね」


 胸の前で小さく手を振り立ち去ろうとすると、不意に強い力で引き戻された。


「まだ話終わってねぇよ!」


 腕を掴んだままの准が、鋭い眼差しを向けている。

 麗子は戸惑い、准を見つめたまま立ち竦んでいた。


「女なんかいるわけねぇだろ!」


 准が声を荒らげた。


「え?」

「お前、俺の気持ち知ってるよな?」

「……」

「ひでぇ奴」


 そう言われても仕方がない。けれど、それならば何と言えば良かったのだろう。

 自分のことをまだ好きでいてくれているのか、なんて聞けるわけがない。


「ごめん」

「謝んじゃねぇよ! 何か俺、すげぇ惨めじゃん……」


 麗子は返す言葉を探しあぐねた。

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