第14話 ゴードン己の道を見つける…?

「ふむ……では、わらわが直々に戦士の道を示してやるアル!」


 アルヴェールの広場。

 戦士ゴードンは、武闘家リンファと向かい合っていた。


「戦士としての強さを知りたいアルなら、実際に拳を交えて学ぶのが一番アル!」


「上等だ!」


 ゴードンは拳を握りしめ、力強く構えた。

 対するリンファは、軽やかに足を踏み込みながら、まるで踊るように拳を握る。


「戦士 vs 武闘家、いざ尋常に──勝負!!」


「うおおおおお!!」


 ゴードンが地を蹴り、一気にリンファとの距離を詰める。

 彼の強みは、圧倒的なパワーと耐久力。

 戦士として数々の戦場を駆け抜けてきたその腕力は、並の相手なら一撃で粉砕するレベルだ。


「くらえッ!」


 右拳を振り抜く。

 だが──


「フッ、遅いアル!」


 リンファは、まるで風のようにヒュッと身を翻し、ゴードンの拳をギリギリで回避した。

 さらに、ゴードンの腕が伸びきった瞬間、彼女の足が鋭く閃く!


「喰らうアル!」


バシュッ!!


「ぐっ!?」


 ゴードンの胴に、的確な蹴りが入る。

 衝撃で数歩後退しながら、すぐに構えを立て直した。


「……クソッ、速いな……!」


「フフッ、戦士の“力”は確かにすごいアル。

 だが、武闘家は“技”と“速さ”で戦うものアル!」


 リンファは再びステップを踏みながら、軽やかにゴードンの周りを動く。


「このままだと、俺の攻撃は当たらない……」


(戦士の戦い方とは?俺自身の強みは…)


「なるほどな……」


 ゴードンは腕を組み、一旦戦闘態勢を解いた。


「えっ? もう降参アル?」


「バカ言え、ちょっと考えただけだ!」


 ゴードンは冷静に息を整えながら、これまでの戦いを思い返す。

 自分はこれまで、「戦士=力でゴリ押しするもの」と考えてきた。


 だが──

 リンファのように“技”と“速さ”を活かして戦うスタイルもある。

 さらに、ヴァン=クロフォードのように、**“動きを封じる剣”**を極めた者もいる。


 そして、自分は……?


「──答えは見えた!」


 ゴードンは、地面を踏みしめた。

 彼の強みは“力”だけじゃない。

 もう一つの強み、それは──


「“重さ”だ!!」


「行くぞ、リンファ!!」


 ゴードンは、低く身構えながら、ゆっくりと前進した。

 まるで、巨岩が転がり始めるように、一歩一歩に確かな重さを込める。


「むっ……?」


 リンファは、これまでのように軽快に動こうとする。

 だが、ゴードンが前進するたびに、空気が重くなるような感覚を覚えた。


「何アル……? 今までと動きが違うアル……?」


「フッ、俺の“重さ”を活かした戦いを見せてやるよ!」


 ゴードンは、自らの体重とパワーを活かし、あえて攻撃を放たずにじりじりと前進する。

 リンファが素早く動けば動くほど、ゴードンのプレッシャーが増していく!


「くっ……まるで壁が迫ってくるみたいアル……!!」


 リンファの蹴りが放たれる。

 だが──


ガシッ!!


 ゴードンは、動じることなく蹴りを受け止めた。


「なっ!? 受け止めたアル!??」


「お前のスピードに頼る戦い方なら、こうすればいい。」


 そして、そのままリンファの足を掴んだまま──


「……持ち上げる!!」


「はぁ!? ちょっ、待──」


ブンッ!!


 ゴードンはリンファをその場で振り回した。


「ぎゃあああああ!!!??」


 観客たちの悲鳴と歓声が交錯する中、リンファは遠心力で回転する武闘家となっていた。


「うっ……お、おぼてろアル……」


 数回回転したあと、なんとか着地したリンファは、ふらふらしながらも睨みつける。


「うぅ……気持ち悪いアル……。」


「フッ、どうだ?」


「……正直、こんな戦い方見たことないアル……。」


 リンファはふっと息をつき、肩をすくめた。


「わらわの戦い方は“速さ”と“技”アル。

 でも、お前の戦い方は“重さ”と“圧”……まるで大地そのものみたいアル!」


「ハッ、まあそういうことだな!」


 ゴードンは胸を張り、拳を握った。

 戦士の強さは、ただのパワーだけじゃない。

 “自分の身体”をどう使うか、それが重要なんだ。


 そして、自分は**“重さを活かす”戦士としての道**を見つけた。


「……いい勝負だったぜ、リンファ。」


「フッ、また勝負するアルよ!」


 こうして、ゴードンは戦士としての新たな戦い方を手に入れたのだった──!


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