犬の名は。「大事な犬。忘れたくない犬。忘れちゃダメな犬。」 「大丈夫?覚えてる?絶対忘れない?」

まみ。

犬の名は。「大事な犬。忘れたくない犬。忘れちゃダメな犬。」 「大丈夫?覚えてる?絶対忘れない?」

恋人の男女2人が、将来について話をしている。


「将来、犬を飼いたいな~。私がどんな犬を飼いたいか当ててみて!」


「それはもう知っているよ。」


「どんな犬?」


「モフモフの犬でしょ?」


「違うよ。耳がピンと立っている犬がいいな~。」


「あれ?前は結婚したら、モフモフの犬を飼いたいって言ってたよね?」


「そんなこと、私は言ってないよ。」


「絶対言ってたから。」


「いつ?」


「いつだったか忘れたけど…。」


「誰と間違えてるの?」


「えっ?」


「それ、元カノとの記憶じゃない?」


「あれ?ごめん…。」


「元カノと付き合ってるとき、結婚したらモフモフの犬を飼おうって約束したんだ?」


「ごめん…。何でそう言ったのか、自分でもわからないんだ。」


「ごまかさなくていいよ。」


「ごまかしているわけじゃなくて…。」


「この前、元カノとの思い出の記憶は、全て頭から消去したって言ってたよね?」


「何か思い出せないんだ…。」


「無理に思い出さなくていいよ。」


「本当にごめん…。」


「大丈夫。怒ってないよ。もう乗り越えたって言ってたけど、まだ断片的に記憶が残ってるんだよ。それほど元カノのことを大切に想ってたんだね。」


「そうなのかな…。」


「元カノも嬉しかったと思うよ。でも過去は過去。これから一緒にゆっくりでいいから、過去を乗り越えていこうね。」


「うん。ありがとう。」


「で、どんな犬を飼いたい?」


「ピンの犬!」


「(爆笑)ピンの犬って何?」


「あれ?ピンとしてる犬じゃなかったっけ?」


「(爆笑)違うでしょ。耳がピンと立っている犬でしょ!もう忘れたの?」


「そっかそっか。耳がピンの犬ね!」


「(爆笑)ちょうど涙をこらえていたとこだったのに、爆笑してそのまま涙が出ちゃったじゃない!」


「耳ね!覚えた覚えた。」


「問題なのは、記憶力の方だったか…。じゃあ昔、実家で飼ってた犬の名前を忘れる前に教えて?」


「もちろん絶対忘れないけど、まだ秘密。」


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犬の名は。「大事な犬。忘れたくない犬。忘れちゃダメな犬。」 「大丈夫?覚えてる?絶対忘れない?」 まみ。 @mm2445

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ