この作品の中で特に魅力を感じたのは、主人公シリウスの唯一性と、相棒ライファットとの特別な関係性です。
シリウスは奴隷屋という職業に就き、奴隷を売買することで生計を立てています。
これだけ聞くと近寄りがたい印象を抱くかもしれませんが、彼自身は人並みかそれ以上の良識を持つ人物で、身内を懸命に守ろうとする義理固い一面もあります。
彼にとって奴隷たちは、商品であると同時に心を持った存在です。それゆえ彼らに対しては公平に接し、過ごしやすい環境を整えるなどの配慮を欠かしません。
「奴隷屋」という肩書きから連想されるネガティブなイメージは、彼の場合、ほとんど当てはまらないといって良いでしょう。
一方で、職業人としてのビジネス感覚はきちんとしており、規則を守らない奴隷に対しては厳正に対処するなど、線引きはきちんとしています。
そして、そんなシリウスが心を許す数少ない仲間がライファットです。複雑な背景を持つ彼がシリウスと出会い、時間をかけて信頼を築いていく過程は、読者にとっても忘れられない思い出となります。
単なる友情とも恋愛とも違う、二人の独特な関係性が時に微笑ましく、時に羨ましく感じられました。
奴隷屋としてのドライな一面と、本来のシリウスが持つ温かな内面。それらが見事に描かれた作品で、読んでいる中で色々なことを考えさせられました。
「奴隷屋の主人」という難しい題材に取り組み、命や差別といった問題に真剣に向き合う作者様の創作姿勢を、私もぜひ見習いたいと思います。