諦めたくない。

那須茄子

諦めたくない。

 日が沈む頃、静かな夕焼けに染まる街を歩く。 




 頭の中は彼の笑顔でいっぱいだ。その笑顔が、別の誰かのために向けられていても。心の中から次々と湧き上がる。


 彼は完璧だ。

 彼の歩く姿、話す声、そして何よりもその優しさが。私の目には、何もかもが輝いて見える。



 同じく彼が好きな人、彼女もまた、私の目には完璧に映る。

 彼女は美しく、賢く、優雅。彼と一緒にいるときの彼女は、一番嬉しそうに笑う。いっそのこと彼女になりたいと願うほどだ。


 

 そういえば今日も、私は彼と彼女が一緒にいるところを見かけた。

 彼女が彼に微笑み、彼がそれに応える。二人だけの時間。

 

 私の胸は締め付けられるように痛んだ。





 夕闇がいつの間にか濃く、空を煮詰めていた。まるで、私から失恋という言葉を聞きたがっているみたいだ。じっくり時間を掛けてしまえば、相手の思う壺。


 私は頭を軽く振り、気持ちをシャッフルさせる。確かに、彼が好きなのは私じゃないし、私では彼には釣り合わない。

 

 それでも私は彼が好きだ。変わらない気持ちが、心の中にずっと存在し続ける以上。無しにはできない。


 これがいいことなのか悪いことなのか、分からないけど。

 諦めたくない。

 

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