いたずらに触れる、もしくは触れない。それくらい微妙な距離が、静かに描かれている。
何度か読み返しても、正確には測りきれないその距離に、何だか夢のうちのぼんやりとした心象に焦燥とする感覚と似通ったものを感じた。
しかし、彼と彼女をとりまく情景に非常に確かな空間がもうけられてあって、これから始まる、もしくは終わる二人の物語について連想せざるを得ない。
静かな語り手にしたたかに魅せられた感覚が、読後感としても非常に心地よいものとして残りました。
朝尾羯羊様の文才には、感無量の想いで溢れております。また筆をとって下さる機会がありましたら、とても喜ばしく思います。