弱体化したはずだよね?追放された元魔導士は救助隊で返り咲く!

夏樹りょう

第1話 『僕がここにいる理由』

 迷宮とは、繁栄の墓場だ。


 地下から魔物に食い荒らされ、気づいたときには土地ごと崩落する。

 命も、営みも、文化も、財産も、魔物にこねくり回されて、地下に広大な迷宮が生まれる。


 豪華絢爛な城や屋敷ごと取り込んでいることから、迷宮内には時々、貴重な史料や秘宝が見つかる。


 それらは魔法遺物まほういぶつと呼ばれ、周囲の都市や国が回収するために、定期的に人を迷宮に送り込む。


 だが迷宮内で独自の生態系を築く魔物によって、はばかれるのが世の常だ。


 それでも、何人もの犠牲を出しても、時に墓荒らし行為と罵られても、人は欲望には勝てない。




◇◆◇

 ロズウェルは苔が生えた石畳の上に立つと、迷宮の入り口と呼ばれる、巨大な六本の石碑に囲まれた大きな穴を見つめる。


 迷宮管理機関ドルイドによって白くて薄い膜のような結界が貼られているが、いま、それが解かれた。

 魂の行き場を失くした人たちの悲鳴のような音が、風と共に吹き出してくる。


 ここは、魔導士だった己が死んだ場所。

 戻って来てしまった。いや、戻らなければならなかった。


 迷宮に取り残された救助者を助けるために。

 過去の自分を超えるために。


 振り返ると、金糸の髪を持つ少女がいた。彼女の前髪越しに、灰紫色の瞳が見える。相変わらず、鮮烈な気高さを秘めている色だ。


「行こう、相棒」

 ロズウェルは少女に手を差し伸べた。


「もちろん」

 彼女は勝気な笑みを浮かべ、手を取った。



 そして、君に相応しい男になるために。

 ロズウェルは救助隊員としてここにいる。

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