第22話 ハーレムがムリな理由と下十条家の秘密。


「ええと、そもそも私が精気を吸わず・食べ物も食べずの飢餓状態みたいになったらどうなるんでしょう」


「それはやめておいた方がいいのう。サキュバスが飢餓状態になると生存本能から無意識化に最大出力で”催淫”を発動させる可能性がある、サキュバスクイーンでそれをやってしまうと


 

 ……………。


 ああああああ~! 純愛神のフラグ回収というか、言った通りのことが起きるやつじゃん!


 もし最大出力で”催淫”を発動させて、総国民催淫状態・嫌悪状態にするものなら…………無差別NTRで私がヤバい!!!???



「……気を付けます」


「それがいいのう。前にも言っておったがサキュバスは精気を溜めることが出来るからある程度は覚醒状態が長くとも毎日吸う必要性はないはずじゃ」



 サキュバスクイーンであるワシの経験則からしての、とトェイさんが付け加える。


 ただ私としてはそもそも人間と同じように生活している状態と、サキュバスに覚醒状態している状態での境界線というか、どうして切り替わるのかがわからなくて。



「トェイさん、サキュバスハーフがサキュバスの覚醒状態になる前兆とかキッカケとかってあるんでしょうか?」



 何気なく聞いたことだったものの、トェイさんは少し考えこむようにして。



「…………うむ、そうじゃな。そもそもサキュバスにおいての空腹状態というのは、いつものような”お腹が減る”と自覚する段階が最初ではあるんじゃがの。じゃから妙に食欲が出る時は疑った方がいいかもしれぬ」



 お腹が減る・食欲が出る…………そういえば、サキュバスに覚醒した朝も妙にリン母さんの手料理を残すのは申し訳ないとか、色々理由を付けて朝食を食べようとしていたのを思い出す。


 もしかしてあれが兆候の一つだったり……?



「そして言いにくいんじゃがの。知人のサキュバスハーフやサキュバスでも共通して”精気を吸いたい”と思うようになる・自覚する・場合によっては覚醒するタイミングはの──」

 


 そう言いながらトェイさんは目線をわずかに逸らす──まるで気まずいかのように。



「性的欲求が高まっている時、ようはムラっとした時じゃ」



 …………。

 

 つまり私、あの日かその前日に”ムラっと”したせいでサキュバスに覚醒した可能性があるってこと!?



「特定のものを見た時・聞いた時、思い出した時とかの。場合によってはを見たとか────」


「あああああああああ!?」



 そう、輪郭しか覚えてないのに”いかがわしい”かつ”最高の夢”だと思うものを見て起きたら私はサキュバスに覚醒していて。


 つまりえっちな夢を見たせいでムラっとした私がサキュバスに目覚めた的な!?


 それをひいおばあちゃんであるトェイさん……というか他者の口から聞かされるとか恥ずかしいってレベルじゃない!?


 トェイさんも気まずいはずだ、そりゃ私だって気まずいしさすがのお姉ちゃんも気まずそうにしてるもん、そりゃ妹とか曾孫の性欲事情なんて困るしかないよ!



「…………ごほん、それで精気を最高効率で吸収する手段は──他人の夢に入りこんで精気を吸うことじゃ。じゃから数日に一回程度人体に影響が出ないぐらいに他者の精気を吸っていければ理想的じゃのう」



 そこでサキュバス、もとい”夢魔むま”の要素が出てくるかぁ。


 夢に入り込んで”いかがわしい夢”を見させて、精気を吸う的な……。

 

 それって私がその他人の近くに行かないといけないのでは……? と聞いてみたところ。

 


「以前はそうじゃったが、今は””越しに全生物の脳が繋がっておるからの。自身が眠って・自身の認識している相手なら夢に入り込むことが出来るはずじゃ」



 夢を見れば純愛神に誰もが相談できる理由、そして全生命体の全ての身体データや行動などをリアルタイム管理出来ているのは全生命体に入り込んだナノマシンによる相互通信によるもの……とか授業で習った気がするなぁ。


 そのラインを使えば私も遠隔で夢に入り込めると…………。



「それ、純愛神様的にはアリなんですか?」



 それ場合によってはNTR判定になっちゃうんじゃ……夢とはいえ。



「”基本的に同意がないと思考直結は出来ないので黙認してマース”とか言ってたのう」



 確かに今の時代、スマホなどの機械端末を使って通信しているのはあくまでも”娯楽”だとか”好み”の延長線上であって、実際に面識があって話そうと思えば創作でいうところの”テレパシー”や”念話”も同意さえあれば可能だったりする。


 もちろん面識がない・または相手から拒否されているならそれは出来ないけど、システム上は存在はしていて……それにサキュバスが乗っかる形になると。


 うーんうーん、なんか抵抗あるというか本当にそんなことしていいのかと思っちゃうんだよなぁ。


 乗り気じゃない私のリアクションを察したのか、トェイさんは代替案を出してくれた──



「夢以外だとそうじゃな……”そういう”相手を多く作るとかかの」


「え」


「っ!?」


 

 ”そういう相手”、ボヤかしているけど、接触・粘膜接触やらで精気を吸える対象を多く作ると解釈出来てしまうわけで……!?


 お姉ちゃんだって衝撃を受けて私の方を見てるし、!?



「いや、ムリですよ!?」


「ううむ、そうか。お互いの同意さえあれば問題ないんじゃがの」



 私が否定するとまた安心するお姉ちゃん、そうだよね……そういうものだよね。

 

 実は純愛神のルールにおいては一対一の関係性を絶対とはしていないようで、一対複数というのも””もとい””いいらしい。


 もちろん関係性の中で誰か一人でも異論・不同意であれば成立しないという大前提があって。


 だからこの世界で”ハーレム構想”とか”ポリアモリー”みたいのは禁止されていはいないけど、現実的ではないわけで。


 もちろん私自体にそんな胆力というかメンタルも甲斐性も魅力もモテ力もあるわけもなく、そもそも生涯独身目指してた身としてはとてもとても!



 複数相手を作るつもりはない以上、面識のある相手とかから夢で精気を吸うことになるわけだけど……それも本当は気が乗らないけどね!


 ただそこで”そもそも”のことを考える、本来サキュバスもとい夢魔というのは男性にとっての理想の女性に擬態した夢魔が”いかがわしい夢”を見せて精気を搾り取るという説もあったはずで。


 そこで私はずっと聞きたかったことを思い出した。



「尾久先生・トェイさん。それで私が女性に”催淫”・男性に”嫌悪”の異能を発動させてしまう理由ってなんなんでしょうか……」



 伝承や創作などベースとは逆転した特性、どうして私は男性を催淫せず女性に嫌悪されないのか。


 

「それも多分わしのせいかもしれん」


「トェイさん?」


「わしのつがいは異世界で出会った人間種であることは知っておるじゃろ?」



 私は頷く、トェイさんがこの世界に来る前のことで唯一自ら明かしていたこととして”今の夫は異世界で会ったこと”があって、それから子孫が私含めてサキュバスハーフとなっていることからも相手が人間種かそれに類する何かであることも察することが出来た。





「お主らにはあまり言っていなかったが、わしのつがいというか夫のレンはこの世界出身・異世界召喚勇者で…………での」





 …………え?



「えっとそれはひいおじいちゃんだと思ったらひいおばあちゃんだったってこと……?」


 

 それに地味に重要な点がある、レンさんがこの世界出身であるということ。


 ……よく思い出せばトェイさんは「異世界で出会った」と言っていただけで、んだ。

 

 

「サキュバスクイーン全盛期の頃のわしはそれはもう多くの男性と間接的に関わってサキュバスの子孫を残していたものじゃが、ある時運命的な出会いをしてのう……」



 ひいおばあちゃんであるトェイさんの性的関係からのろけまでも聞くのは何とも言えない気持ちに……。


 それはともかく、そうしてサキュバスクイーンとしてトェイさんが異世界で出会ったのがとしてかつて異世界に召喚されたレンさんだったらしい。


 ──らしいじゃないんだけど!? ひいおじいちゃんって妙に中性的だし昔の写真を見ても若々しいと思ってたけど女性勇者で実質ひいおばあちゃんだったとか!?


 私にとっての””のひいおじいちゃんがひいおばあちゃんだったなんてなぁ……まだあんまりしっくりこないかも。



「それでわしはレンさんと異世界で結ばれてのう、そしてこの世界に来てから初めてお腹を痛めて産んだ子供がスイだったわけじゃ」



 急に明かされる私たちのルーツ!?


 そして明らかに”あの時”以降でもないのに女性同士でサキュバスハーフなおばあちゃんことスイさんが誕生してる時点で色々驚きなんですけど!?

 


「そしてスイと結ばれたモミジも奇妙なめぐり合わせでのう。……と名乗っている時の方が多いかの? お主らユリやスズランにとってのおじいちゃんじゃが、この世界出身の一族で異世界生まれの”変身メタモルフォーゼ”の異能持ちでの……元は女性だったのじゃが、男性に変身している状態でスイと出逢い結ばれておってな。そうしてスイから産まれたのがリンじゃ」



 じょ、情報が多すぎるんですけど!


 えっとじゃあ整理すると、ひいおじいちゃんは女性な上におじいちゃんも実は異世界出身の一族な上で女性で…………!?


 おじいちゃんは”紅葉”と書いてコウヨウと呼んでとは言っていた気がする、そしてたまに親族で集まるとモミジさんって居たなぁ! 


 その時はよく思い出せばモミジさんがいる時は何故かコウヨウさんが居なかったけど…………確かに紅葉を”モミジ”読みも出来るけど!?


 そして私にとってお父さんでありお姉ちゃんやアヤメにとってはお母さんのシオン母さんがいて!



「ということは下十条家って実質女性しかいないのでは……?」


「うむ……そういうことになるのう」



 なんだこの一族!? 普通の一般家庭かと思ったら──


 曾祖母はサキュバスクイーンで曾祖父は女勇者、祖母はサキュバスハーフで祖父は異世界生まれの変身異能持ち…………クセが強すぎない!?

 

 

「そういった男性の遺伝子が基本的にほぼ無いと言っていい一族で、わしがつがいとなったのが女性のレンさんだったこともあって…………周りに実質女性しかなかったのもそうじゃが、遺伝子というか魂からして女性以外免疫がない状態になったと解釈することも出来てのう」



 つまりは……?



「ユリが女性好きなのも、催淫効果が女性に対してなのもそこらへんが影響している可能性があるのう」



 トェイさんことひいおばあちゃんに私の好むものがバレている地獄!


 そして魂からして私は女性を欲していて”催淫”を、魂からして免疫がないから・知らないからこそ男性に対して”嫌悪”の異能を向けていると。



 ………………それは私、トェイさんにも謝られたのも仕方ない気がしてきたよ!



 そうして今回のことを機会に私とお姉ちゃんとの秘密の関係が始まった。


 姉と妹という関係性なのに、サキュバスとしての主従は逆の立場に。


 覚悟を決めなきゃいけない、これからは人間としても・サキュバスの私としても生きていかないといけないから……!


 そしてお姉ちゃんを生かすために、私とお姉ちゃんは…………


 というか私が飢えると────私のサキュバスの異能で国がヤバいし私もヤバい!

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