第20話 サキュバスクイーン。


 下十条=トェイウーゲ、私こと下十条ユリにとってのリン母さん方のひいおばあちゃんに当たる人物で──トェイさんは異世界出身。


 トェイさんとはお正月には必ず顔を合わせて、その時に昔話を聞かせてくれるものの……基本的にはこの世界に来てからのエピソードしか話してくれていなかったり。


 事前に教えてくれたのは「レンさん (夫) とはこの世界に来る前に結ばれたのじゃ」と、だけでそこを突っ込もうとすると毎回はぐらかされて終わっていた。


 実際その後の戦後エピソードとかも普通に面白いし、なんだったら”あの時”以降は世界中どころか近隣惑星も飛び回ってるからそれが新鮮で面白くて困る……!


 ただトェイさんの出自があまりに気になって調べてみた結果、歴史書とか当時の新聞から私にとってのひいおばあちゃんにあたる下十条=トェイウーゲとひいおじいちゃん (?) にあたる下十条 レンは”異世界事変”時に召喚勇者と共にこの世界にやってきた第一世代で、一度目の世界滅亡を阻止した一員らしいという記述がいくつも出てくる……まぁ実は親族が有名人だったやつ!


 異世界事変から既に八〇年が経っている上に、この世界に来る前から年齢を重ねているので実年齢は一〇〇歳は確実に超えているっぽい。

 

 世界のルールが変わって身体情報を気軽に変えられる前でも二十代後半のような容姿をしていてまさに美魔女状態だったのだとか。


 今ではちょくちょくイメチェンをして楽しんでいる、なにやらひいおじいちゃんことレンさんとのプレイの一環というのが紅葉おじいちゃん談だったり……それはぶっちゃけどうでもいいかな!


 そんなひいおばあちゃんのトェイさんがサキュバスとして私の祖先・私がその末裔にあたることは最近知ったわけで。

 

 そして今、トェイさんが私の眷属にしてしまったお姉ちゃんの病室へ訪ねてきた。



「ユリよ、スズランと、失礼するぞ”サーチ”……ふむ」



 トェイさんはモノクルのようなものを取り出して私たちをそれぞれ見て、そして納得したように口元に握りこぶしを寄せる。



「ふむ、やはりユリが主でスズランが眷属の主従関係が出来ておるのう」



 主従関係が出来ているらしかった。


 そりゃ私の眷属ということは私が主でお姉ちゃんが従う立場に………………逆にしてえええ!

 


「そのことも含めて孫たちと話すのじゃ、スズランはもう起き上がれるかの?」


「はい、問題ないです」



 うむ、と頷くトェイさんに連れられて担当医師「尾久」と書かれた異能科の診察室にやってきた。


 モニターが載っていて上面にはタブレットや血圧や体温を測る機械などが置かれた上部に本棚のある机と椅子、患者用と思しき椅子が二脚と壁際には診察台がある個室。


 トェイさんは診察台に腰掛け、そして目の前には異能科の担当医師だと思う「尾久」のネームプレートを付けた銀髪で白衣の…………あの尾久さんだよね!? でもなんか違うような……?



「えっと尾久さんですよね……?」


「異能科の尾久です。ああ、異能対策課で下十条ユリさんを担当しているのが妹の方ですね」



 つまり政府直属の異能対策課の尾久さん (妹) と異能科の尾久先生 (姉) がいるってこと……?


 地味に内心驚いてるけど、それどころじゃないのが分かってるので「そうだったんですね」と軽く返してから、私とお姉ちゃんも座るよう促されたので尾久先生と向き合って座る形になる。


 ちなみに病院に私たちの両親ことリン母さんもシオン母さんも来ているらしいけど、今は別室に待機していてまずは当事者の私とお姉ちゃんと話すことにしたようで、トェイさん・尾久先生曰く二人の了解も得ているらしい。



「以前の下十条ユリさんへの”サーチ”結果と今回入院時に下十条スズランさん本人の了解を取って行った”サーチ”の結果から、両人とも種族としては”サキュバスハーフ”、そして下十条スズランさんにおいては [下十条百合の眷属] となったのが確認されています」



 基本的に私の知らされた・知っていた情報の通りだけど、改めて確定したのはサキュバスハーフ種のリン母さんを父とするお姉ちゃんもまたサキュバスハーフ種ということらしい。



「サキュバスハーフの主従関係というのがこの世界でも希少で情報も少なく私たちでも異能科でも分からないことが多く、そこでサキュバスの専門家として下十条=トェイウーゲさんをお呼びした形です」


「うむ、ということでわしはひいおばあちゃんというよりもサキュバスの専門家として呼ばれたのじゃ」



 トェイさんがサキュバスの専門家というのも初耳だなぁ……。



「ただひいおばあちゃんとしてユリ・スズランの二人には謝っておく、すまない」


「なんで」「どうしてトェイさんが謝るんですか?」


  

 私とお姉ちゃんが口を揃えるように聞くと、少し気まずそうな表情でトェイさんは口を開いた。



「普通のサキュバスハーフ種ならサキュバスの異能がここまで強力なこともないし、主従関係を築いてしまうことにもならないはずなのじゃ」



 そもそも普通のサキュバスハーフとは……? 


 ただなんとなく純愛神のヒントから私が普通のサキュバスハーフではないことはなんとなく察しがついていて。



「それはわしが”サキュバス種”の”サキュバスクイーン”で、ユリやスズランはその子孫だからという可能性がかなり高くてのう……」


「トェイさんがサキュバスクイーン!?」



 新情報が多い、というかリン母さんからそんなこと聞いてないんだけど~!


 それは文字通りならサキュバスのクイーン、上位種とか最上位種的なことになるんじゃ……?



「想像通りかもしれんがサキュバスクイーンのサキュバスの持つ異能は強力での。それでも人間種とつがいとなって産まれたサキュバスハーフの子孫は血が薄くなり異能に関しても相応に弱くなるはず……だったのじゃ」



 トェイさんの言う番というのが、彼女にとっての夫のことで私にとってのリン母さん方のひいおじいちゃんにあたる人ことレンさんになるのだろう。


 お正月にはいつもトェイさんの隣にいるひいおじいちゃんことレンさん。

 

 トェイさんに負けないほど若々しくで、最近はトェイさんと同じぐらいまで容姿年齢を下げていたので傍から見れば微笑ましい男児女児のカップル (?) にしか見えなかったという。



「血を継いでいる娘のスイ、わしの直系の孫にあたるリンでも異能が発現しなくてのう。毎年の正月の集まりでもこっそり”サーチ”しておったがユリやスズランやアヤメも異能が発現した様子は見られなかったのじゃ」



 正月に必ず帰ってきて・一族全員が揃っていたのはサキュバスの祖先にしてサキュバスクイーンのトェイさんによる身体検査も兼ねていたってこと……?


 そういえばモノクルでじっと見られていたことがあった気がする。



「じゃからユリがサキュバスの異能を発現させたのはつい最近の可能性が高いのじゃ。もっともわしが居らぬ間知らずに発動していた・異能対策課の探知にも引っかからない程度だったらわからないがのう」



 トェイさんの言う通り私がひどく汗をかいて・ムチムチになった日、それが私がサキュバスの異能に覚醒した日と思っていいのかもしれない。


 …………後半の実は以前にも発動してたかどうかは証明しようがないからスルーする!



「そしてスズランがユリの眷属になった理由じゃが」



 いよいよ気になっていた核心で、どうして私が主でお姉ちゃんが眷属なのか。


 そもそもなぜそんな”契約”のようなことが知れずに行われてしまったのか、それがトェイさんの口から明かされる……!





「サキュバスの主従関係はのう……そのな。お互いが想い合っている上で、サキュバス側から対象の精気を吸い尽くすことで成立するものなんじゃ」



 ……えっ?

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