ラプラスAki

 雨を見ていた。ガラス越しの雨の景色は、どこか静かで物悲しい。

 コーヒーを一口のみ、再び雨を見つめた。

 静かにカップを置く。するといつものウェイトレスが机に近づいてきて、

「おかわりは?」

 と聞いていた。

 ウェイトレスに向けた視線をコーヒーカップに落とし、

「お願いするよ」

 と言った。

 ウェイトレスはコーヒーを注ぎ

「今日は彼女と一緒じゃないの?」

 と聞いた。

「もういないよ」

 と言ってガラス越しに雨を見る。

 ウェイトレスは少し驚いた表情をした。

「どこがで元気でいるだろう」

 と付け加えた。

 ウェイトレスは察してたのか仕事に戻っていく。

 再びコーヒーに目を落とす。そこには自分の顔が映っていた。その顔をただ見つめていた。

 そろそろ帰ろう。コーヒーを飲み干すと、そう思い上着の袖を通した。そうして店の扉を開けると雨の匂いがした。空を見あげると鉛色だ。行き交う人々は思い思いに雨の景色に溶け込んでいる。

 そうして店を出て、静かな雨の中に溶け込んでいく。

 人々と同じように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラプラスAki @mizunoinori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ