風紋
青城澄
プロローグ
賢き者
遠き道をゆけ
難き道をゆけ
正しきものついには勝たむ
*
神カシワナカは鷲の翼ある立派な男の神だった。
彼はある日フウロ鳥の羽のしわを開いて、アルカラを創った。
それは七つの青い山と七本の蜜の川が流れる天国だった。
花が咲き乱れ、五色の実の生る果樹の森があった。
野には青い鹿が群れ、川には金銀の魚が群れていた。
草むらには蛍と蝶がいた。
沼には夕焼けのように赤い蛙がいた。
美しい天国アルカラを創ったカシワナカは、次に人間の魂を創った。
それは川底の石のように美しい光だった。
おもしろい声で話し、おもしろいことをした。
またいいものを創ったと思ったカシワナカは、今度は地上にアルカラとよく似た世界を創ることにした。
虹のような山と広い野と青い水のある豊かな世界だ。
山には栗が生り、野には鹿が群れ、水には魚や蛙がいた。
またいいものを創ったと思ったカシワナカは、うれしくて口笛を吹いた。
そしてその歌を土にこめて、そこから肉と骨のある人間を創った。
そしてそれに人間の魂をこめて、地上世界でおもしろいことをさせることにした。
カシワナの村はこうしてできたのだ。
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