風紋

青城澄

プロローグ


賢き者

遠き道をゆけ

難き道をゆけ

正しきものついには勝たむ





神カシワナカは鷲の翼ある立派な男の神だった。

彼はある日フウロ鳥の羽のしわを開いて、アルカラを創った。

それは七つの青い山と七本の蜜の川が流れる天国だった。

花が咲き乱れ、五色の実の生る果樹の森があった。

野には青い鹿が群れ、川には金銀の魚が群れていた。

草むらには蛍と蝶がいた。

沼には夕焼けのように赤い蛙がいた。


美しい天国アルカラを創ったカシワナカは、次に人間の魂を創った。

それは川底の石のように美しい光だった。

おもしろい声で話し、おもしろいことをした。

またいいものを創ったと思ったカシワナカは、今度は地上にアルカラとよく似た世界を創ることにした。


虹のような山と広い野と青い水のある豊かな世界だ。

山には栗が生り、野には鹿が群れ、水には魚や蛙がいた。

またいいものを創ったと思ったカシワナカは、うれしくて口笛を吹いた。

そしてその歌を土にこめて、そこから肉と骨のある人間を創った。

そしてそれに人間の魂をこめて、地上世界でおもしろいことをさせることにした。


カシワナの村はこうしてできたのだ。



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