夢のなか

@ao23

第1話

「夢のなか」


 1 


どんな内容か覚えていないが、嫌な夢を見た気がする。

自分の部屋のベットで目が覚め、台所からタバコの匂いと康太の鼻歌が聞こえた。


「康太、俺のスマホ知らない?」

「え、陽平のスマホならさっき洗面所らへんから着信なってたの聞こえたけど」

「お、ありがと。てかお前今日バイトじゃなかったっけ?」

「寝起き早々質問の多いやつだなー、今日は休み」

「じゃあもう一つついでに質問で悪いんだけど、直人も昨日一緒に呑んでたはずだけど先に帰ったのか?」

「直人なら今日の始発で帰ったよ。午後から彼女とデートだとさ」

「そうなんだ。てかあいつ、いつの間に彼女できてたのかよ」

「うーん、なんか最近アプリで知り合って勢いでそのまま付き合ったとか 今日どうする?このまままた泊まってくか?」

「いや、明日バイトだし流石に帰る…けど、飯食ってからでいい?」

「何もないし、なんか頼むか」

「じゃあ待ってる間風呂かしてくんね?」

「いいよ」

さっき見てた夢はなんだったんだろう。何か嫌な、暗い、ずっしりと重い物がのしかかるような、

シャワーを浴びながら、さっき見ていた夢のことを思い出した。

後味の悪い夢を見てた気がする。けど、なにも思い出せない。思い出したくない気もしている。

一体何だったんだろうか。


風呂から上がって40分ほどした頃、家のベルがなった。

「そういえば直人が使ってるアプリってなんだろう」

「どうした?お前も彼女欲しくなった?」

小馬鹿にしたようにフッと鼻で笑いながら質問で返してきた。

「いや、そう言うわけじゃないけど。最近アプリでも物騒な事件とかあるじゃん。この前も監禁ぽいこと起きたり、美人局みたいなのから殺人未遂があったり。」

「そんなのほんの一部だろ。大抵は適当に遊ぶ相手探したり、成り行きで付き合えそうな子見つけたり、そんなもんだろ。俺も最近アプリ入れていい感じの子いるんだよね〜」

「康太も入れてんの?」

「つい最近始めたばっかだけどね。」

アプリに出てきた写真たちを右にスライドさせながら、見せてきた。

「こうやってこの子と繋がりたいと思ったら右にスワイプさせて、この子はいいやって思ったら左にスワイプすんの。」

「スワイプ?」

「そう、そんでいいと思った子には『よろしく!』とか『可愛くて気になったのでいいねしました!』十日って送って、返事待つんだけどさ、あんまり返事来ないからとりあえず手当たり次第送ってくって感じ。」

「始めたばっかにしては慣れてるな。」

「まぁな。直人に教えてもらって入れてからすぐ動かして、昨日も2人に会う前に下北でデートしてきた」

そう言うと、他愛のない会話からすぐに会う約束に繋がるトーク履歴を見せてきた。

「お前もやってみろよ。結構サクッと会えるし、お互い飽きたらさっさと切れるし」

「まぁ、気が無たらやってみるかな」

どうせ気乗りなんてしないだろうけど。

「それ絶対やらないやつじゃん」

二人で何の変哲もない会話をして飯を食って、日が落ちる頃と同時に帰宅した。


数日後、康太と直人と3人で大学で昼食を食べていた時、直人が突然切り出した。

「なんかさー、最近心霊系の動画とかめっちゃ流行ってない?」

「確かに俺もよく、YouTubeとかで流れてくるわ。康太もそういう系観る?」

「俺はあんまみないかな、怖いとかじゃないんだけど…なんかあの手のやつって嘘くさくない?

やらせとかわざと編集で付け加えたりとか」

「じゃあみてるの俺と康太だけか。結構ガチっぽいのとかあんまり編集とかしてないのもあるし面白いよ…今日家集まってみんなでそういうのみてみね?」

「しょうがないな、また俺の家か?」

「そりゃぁ、陽平の家の方が大学からも駅からも近いし楽じゃん、俺らが。」

「はいはい、わかったよ。俺午後も授業あるけど2人はもう今日は終わりだよな?」

「そうだな。いつもみたいに先に入ってていいよな」

「じゃあ鍵渡しておくわ」

「おう、酒とかは俺らが適当に買っておくからまっすぐ帰ってこいよ」


昼食を食べ終えて、近くのコンビニで食べ物やお酒を買い込んで幸田の家に向かった。

向かう途中に一瞬デジャブのような感覚があった。

「陽平?どうかしたか?」

「向こうの森っぽいところ、なんか入ったことあるような…なんとなくあの鳥居の感じとか入り口の小道の感じとか見覚えがあるっていうか、夢で見たような」

「そう言うのあるよな。夢の中で通った道とか、瞬間とか」

「そう、その感じがしたけど…あんなとこ入ったことないし夢で似てる景色見ただけかも」

「案外入ったことあるんじゃないか?」

「入んないよ、あんなとこ」

「まぁそうだよな、荷物重いし早く行こうぜ」

「そうだな」

そうだ、あんなところになんて入るわけがない。

…本当に?


「お邪魔しまーす 先に乾杯しちゃおうぜ」

「そうだな。あいつが帰ってくるのあと1時間後くらいか。その前にいい感じの動画いくつかか見つけとこうぜ」

「いいね、俺のオススメの人とか入れとこうかな」

「だれ?」

「俺の友達がたまに撮影とか編集手伝ってる人なんだけど、ホラーというよりはミステリーとか事件系で、結構リアルなもので面白いよ」

「最近話題になった、アプリさ殺人未遂とか扱ってたんだけど見やすくて面白かった」

「そういえば直人もアプリ始めたんだもんな。他人事じゃないじゃん」

「まぁな。でもそんなのごく一部だしどちらかといえば、女子の方がアプリやるの怖いんじゃないかな」

「確かにそうだけど、男でも何があわるかわかんないからな。気をつけろよ?」

「わかつてるって。いいから他の動画も探してみようぜ」

2人でよく観ている動画や見たことがないけど気になった動画をいくつか見つけて再生リストを作った。

呑みながら先に動画を見たり、だべっているとドアのぶをガチャガチャと回す音が聞こえた。

回す音が聞こえたのに入ってくる気配がない。

「あいつ、鍵閉まってるのにそのまま開けようとしたのか?」

違う。鍵を開けようとする音じゃなかった。確かにドアノブを乱暴にこじ開けようとする音だった。

咄嗟にパソコンの音を下げて極限まで音を立てないように息を殺した。

少ししてから、ドアに耳をつけ気配がないのを確認したあとドアスコープで外を覗いてみた。

誰もいないように見えたので、後ろには直人がスマホとハサミを持って待機させ、静かに鍵を開けてみることにした。

そっと、じっくりドアを開けると…


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