rescR.I.P.t

なの星屑

プロローグ R.I.P

 かつて、世界は絶望に包まれていた。


 穢れしマナ──ヴィルスが世界を蝕み、その呪いを振りまいていたからだ。


呪われしは、魔獣。

 魔獣を統べしは、魔王。

 そして、その魔王を討つは──勇者、エイリアス。


 世界は、彼を救世主と定めた。

 彼は聖剣を手に、仲間と共に幾多の死線を越え、ついに魔王を討ち果たした。

 勇者自身の命と、仲間を引き換えにして。


「ありがとう、勇者!」

「ありがとう、エイリアス!」


 世界は歓喜に沸き、人々は英雄の死を称えた。

 祝祭の火は夜を照らし、命の再生を誓う鐘が鳴る。


 勇者よ、安らかに眠れ。

 勇者よ、ご冥福をお祈りします。



 ──めでたし、めでたし。



 そのはずだった。


 魔王が滅びても尚、魔獣は消えなかった。

 ヴィルスはあいも変わらず、世界を蝕み続けた。

 沈黙の闇に息づく悪意は、次なる災厄を生むために胎動する。

 人々はその不吉を恐れた。


 そして、人々は新たな禍を見出す。


 魔王亡き後、最後に残った災厄。

 魔獣を統べし厄災の魔女。


 彼女こそが、世界を蝕む禍なのだと。


 その正体は、かつて勇者と共に戦った少女、ミラだった。


 英雄の隣にいた少女は、いつしか魔女と呼ばれた。

 仲間として戦った栄光は忘れ去られ、彼女は人々の憎悪の対象となる。


 世界の願いはたった一つに収束した。


 ·····そして、時は流れ。


 かつての勇者、エイリアスは、死の淵から再び目覚める。


 彼を呼ぶ声がある。

「勇者よ、立ち上がれ」


彼を望む声がある。

「勇者よ、魔女を殺せ」


 かつて共に戦った仲間を、世界が討てと言うならば。


 勇者は、何を選ぶのか?

 勇者は、誰を救うのか?

 勇者は、何を望むのか?


 世界は命ずる。

「魔女を殺せ」と。


 剣は問う。

「お前は何を救うのか」と。


 魔王を倒そうとも、死者にすら安息はない。

 祝福も、冥福すらも与えられはしない。

 静かに眠ることを許されない。


 世界が求めしは、救済か、それとも破滅か。

 その答えを導くのは、勇者か、それとも魔女か。


 かつて勇者と呼ばれた者は、今一度、その名を呼ばれる。


「勇者よ。今度こそ、世界を救ってみせろ!」


 物語は回帰する。

 終わりは始まりとなり、再び新たな物語が幕を開ける。


 ──めでたし、めでたし。


 その言葉の続きを、君は知っているか?



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