今を生きる人々

推し

「……ただいま。」

そう、誰もいない部屋に呟いた。

散らかった部屋には目もくれず、カバンを部屋に投げ捨て、何かに取り憑かれたかのように重い体をベットへ預け、倒れ込む。煩雑した部屋は持ち主の心の乱れ、なんて聞いたこともあるが、今の自分を見ればあながち嘘じゃないな、と感じる。

「あぁ、もう無理だ……」

目を閉じると、嫌でも辛い映像が流れ出す。

ただ、それだけ。それだけだけど。その時間が酷く長く感じるのだった。

その時、どこからか音楽が流れ出す。着信音なんて、設定すらしてないのに。

「昔好きだったやつ。名前は……誰だったかな。」

覚えてもいないミュージシャンの曲。歌っていたのは当時好きだった配信者だった。歌詞に、その声に。なにか惹かれるものがあったんだ。

辛いことも忘れて耳を傾ける。次第に憑き物が取れ、体は段々と軽くなっていく。

音楽を聴く。ただ、それだけ。それだけだけど。

立ち直るまでにさほど時間はかからなかった。



「……明日も頑張ろ。」

涙を拭ってポツリと呟いた。

さっきまでは暗黒しかなかった中に一筋の光が指す。何が変わった訳でもなんでもないのに、なんとはなしに前を向けている自分に、不思議と不安はなかった。


一つ伸びを入れて、改めて目を閉じる。

何かは分からない幸福感と共に、私は眠りにつくのだった。

明日に僅かな希望を託して。

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今を生きる人々 @yorozu-kou

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