第2話 ブロック塀とぶち猫

 珍しく朝から動きっぱなしの日。

 午後はゆっくり休もうと思うも、所用で外出することになってしまう。

「ゆっくりするのは、お預けかぁー……」

 今日はなんだか忙しいな。

「暇すぎるよりマシか……」

 そのうち、この忙しさも楽しくなるさ。

 そんなことを思いながら自転車を走らせる。

 用事が終わってから気が付く。

「あっ、スマホがない」

 どうやら家に置き忘れたらしい。

 ないって気が付くと、ソワソワした気持ちになるのは何なんだろう?

 もう家に帰るだけだし……まぁ、いいか。

「さすがに帰ったら、ゆっくり珈琲でも飲みたいなぁ」

 家でのんびり、家でのんびり。もうゆっくり今日は休むぞ。

 家に続く階段を上っていると、フッとブロック塀の上にいる黒と白のぶち猫が目に入った。

 あ、猫。

 猫に見降ろされながら、なぜか数十秒間見つめ合ってしまった。

 どこから来たんだろう?

 視線をそらして、家の玄関前について鍵を開けようとしたけど、なんだか猫が気になってしまってブロック塀の上を見るも、もう猫はいなくなってしまっていた。

 「なんだ……いなくなっちゃった」

 フッと目線を左に向けると、ブロック塀の上から移動したぶち猫と、また目が合ってしまった。

 どこかにお出かけかな?

 気づいてなかっただけで、よくここを通っていたのかなぁ?

「バイバイ」

 届いていないかもしれないくらいの小さなで声で言ってから、家の中に入った。

 初めて見た気がする猫だけど、視界に入っていなかっただけで、よくこの辺を探索しているのかなぁ?

 何を思って私のこと見つめていたのかなぁ?

 そのころぶち猫は、いつものルーティンである木が生い茂る森の中を探索していた。

「あぁぁー……ビックリした。いつも人がいない時間に現れるんだもんな。怒ってたのかなぁ? どんくさそうなヤツだったけど……」  

 あいつは大丈夫ってことにしておこう。

 そんなに怖そうな人じゃなかったし。

 そう思い直して、いつものルーティンの森の中を探索するのであった。

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