グルメシティ
兼穂しい
第1話
【 第一章 カレーライス 】
辛吉が父の一人で切り盛りしているカレー屋「孤雲」を継ぐ決心を固めたのは、一年前だった。
がむしゃらに働き「99%上手くやれている」と褒められたのは最近のことである。
定休日に店に呼び出された辛吉。
「今日は最後の1%を伝授してやる。」
父がノートパソコンを開き動画を再生させた。
厨房を撮影したものだった。
* * *
アヒルのおまるに跨り用を足すように見える父。
いや、明らかに用を足している。
おまるの内容物を寸胴にぶちまける父。
それをよくかき混ぜる。
スマホで辛吉に電話をかけている。
電話で呼び出された間抜け面の辛吉が厨房に到着。
寸胴のルーをたっぷりかけたカレーを辛吉に振る舞う父。
笑顔で舌鼓を打つ辛吉。
* * *
絶句する辛吉。
顔を赤らめる父。
( い や 、 そ の リ ア ク シ ョ ン は 違 う だ ろ )
「いいたいことはわかる。俺も親父からこの隠し味を知らされた時は今のお前と同じ感じだったよ。」
( 親 子 二 代 で や っ て ん の か い )
「でも大丈夫だ。大腸菌ってのは熱に弱いから人体に影響はない。」
( そ う い う 問 題 じ ゃ な い )
「だいたい飲食店なんて大なり小なりみんな似たようなことやってるんだよ。」
( 全 飲 食 店 に 謝 れ )
「向かいのラーメン屋なんか隠し味にザ〇メン入れてるって話だぜ。これがホントのザ〇メン屋なんつってなwww(引き笑い)」
( ラ ー メ ン 屋 に 訴 え ら れ ろ )
「俺はこの味で今まで母さんとお前を養ってきたんだ。そのことは胸を張れる。恥ずかしくない。」
( 恥 じ ろ & 客 に 詫 び ろ )
「そもそも排泄物が汚いなんて影の政府が我々に植え付けた誤った概念なんだ!」
( 凄 い こ と 言 い 出 し た ぞ 誰 か た す け て )
「俺は医者に余命宣告されてる。先がもうないんだ。いまさら店を継がないなんて言わせないぞ。お前多額の借金抱えてるんだろ。仕事の選り好みなんて出来る身分じゃないよな。」
「・・・・・。」
「さあ、おまるに跨れ。最後のワンピースを完成させるんだ。」
(特撮モノの第一話で主人公にロボット騎乗を促すみたいな空気感出してるけど「クソしろ」って言ってるだけだよな・・・。)
* * *
【 第二章 ラーメン 】
行列のできるカレー屋「孤雲」の向かいにある人気ラーメン屋「パイタン」。
営業前、厨房で二人の男が寸胴鍋の前に立っている。
「始めるぞ。」
バイトリーダー利田の号令と共に寸胴の中めがけて射精し始める二人。
巨大なイチモツをしごきながら利田が新入りの新田に話しかける。
「驚いただろ。スープの作り方が独特で。」
「えぇ・・・。」
若干引き気味の新田。
「まぁ、飲食店なんて多かれ少なかれ、みんな似たようなことやってるんだよ。」
( こ こ と 一 緒 に す る な )
「向かいのカレー屋なんか隠し味にウ〇コ入れてるって噂だぜwww(引き笑い)」
( お 前 は 小 学 生 未 満 か )
「店長がトシだから俺達若いモンの役目なんだよ。これ。」
「白湯(パイタン)の名前の由来ってコレなんですか?」
「いや、違う。店長はあそこの毛が生えてない女が大好きなんだよ。」
( そ れ は パ イ パ ン だ ろ う が )
* * *
【 第三章 ビール 】
クラフトビール専門店「ゴールド」のカウンターで、月刊「がんじグルメ」の編集長である須加が上機嫌でマスターに向かって語り続けている。
「遂に夢が叶ったよ。雑誌の企画で子供の頃から通い続けてる『孤雲』のカレーと『白湯(パイタン)』のラーメンのコラボを遂に実現させたんだよ。いやぁ、あのカレーラーメンは最高に旨かったなぁ。」
* * *
味が負けないように互いの店の隠し味を10倍に増量したカレーラーメンを感涙しながらすする須加。
ドンブリを天井に掲げ、最後の一滴までスープを味わう姿を両店の店長が憐れむような眼差しで見つめていたことに須加は気づいていなかった。
* * *
「へぇ、そんなに旨かったんですか。俺、『孤雲』のカレー食ったことないんですよねぇ。」
「ヤヴァイよ、それ。人生半分損してるって。『白湯(パイタン)』のラーメンは?」
「それも食ったことないですねぇ。」
「ヤヴァ過ぎるって。人生半分損してるよ。」
「合わせて人生全損じゃないですか。俺・・・。」
苦笑いでグラスを磨くマスター。
「『孤雲』のカレー、『白湯(パイタン)』のラーメン、『ゴールド』のプレミアムビール、この街のグルメ偏差値高過ぎでしょ。ねえマスター、なんでここのプレミアムビールはこんなに旨いの?」
「製法が特別なんですよ。」
須加の死角でビールサーバー内に放尿し続けるマスター。
~ Fin ~
グルメシティ 兼穂しい @KanehoShii
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