せめて一途に想ってあげて欲しかった

百合 一弘 ーゆり かずひろー

どう思われようが許せない

私には好きな人がいる。でもその子にはイケメンな彼氏がいる。まああっちの恋愛対象が異性な時点で叶わぬ恋なんだけど彼氏がいることで叶わなさが増している。


そんな好きな人の彼氏がハイスペックで一途なら大人しく身を引く。でもあいつは顔面がいいだけ。一途のかけらもない。なぜならこの彼氏冗談でやってんのかわかんないけれど男友達と自分で相合傘を書いている。


私はなることができない立ち位置にいるのに、あんなかわいい彼女がいる中で遊びでも相合傘を書くことが許せなかった。重いかもしれないがどうしても許せない。本能的に黒板消しを握り書いてあった相合傘を消した。黒板係だからという理由を盾にして。すると


「はぁ!? 性格悪っ!」


と言われた。性格が悪いのはそっちだと思いながら無視をして席に座ろうとした。そしたらまたあいつが相合傘を書いたさっきよりも大きな字で。しかもピンク色のチョークで。怒りが沸々湧いてきたが必死に抑え仕事をしてる風を装って書いてあった相合傘を消した。また書いてきたから消した。そろそろあっちが面白がっているのがわかっていながらも書かれた相合傘を消す。


「クズだなお前」


そんな言葉を浴びせられても関係ない。好きな子の1番の存在になれるのにこの態度なのが許せない。いや悔しい。こんなやつよりも想っているのに同性だからスタートラインにすら立てない。それが悔しくて何度だって消した。


チャイムがなりこのやりとりは終わった。


でも次の日あいつが信じられないことを口にした。


「俺あいつのこと好きじゃないわ」


自分の耳を疑った。本人がいないからって言っていいことと悪いことがある。私の中の何かが切れる音がした。気がついたらあいつの襟を掴み上げていた。


「お前、好きじゃないならさっさと別れろやぁ! そうじゃないなら二度と言うな!」


顔は怒りで熱くなり悔しさから目からは涙が溢れていた。そして自分でも聞いたことのないような声で私はあいつに向かって怒鳴っていた。クラスメイトが周りに集まっていた。そして何事かと私の想い人もその場に来た。でも私はそんなことを気にする余裕なんてなかった。今まで出したことのないような声量で私は怒鳴りつけた。


「世界で一番、お前のことが嫌いだ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

せめて一途に想ってあげて欲しかった 百合 一弘 ーゆり かずひろー @kazuhro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ