ルシフェル

空里

第1話ルシフェル結成

ここはレクトール王国、謁見の間。

「皆、よく集まってくれた。この五名を天使に打ち勝つための集団ルシフェルに任命する」

レクトール国王が高らかに宣言する。

これは長いレクトール王国初の試みである。

この世界は長らく天使の管理下におかれている。その実情は時に人権すら守られない。

その状況を打破すべくルシフェルという組織が結成された。

五名という少ない人数なのは大がかりな行動をすると天使に王国ごと消されるからである。

とは言ってもこの五名は王国内からかき集められた精鋭達だ。

「そして、ルシルよ。お主がリーダーだ」

「はい」



先程の式典は終わり王城の客室にルシフェルとなった五名が集まっていた。

その五名の内の一人が先程リーダーとして任命されていたルシルである。

その彼の頭にはチラチラと寝癖が立っている。式典が終わったばかりであるため式典の後についたわけではなく寝癖を立たせたまま式典に参加していたのである。そこから彼のずぼらさが垣間見える。

そんな彼だが、実は他の四名を集めたのは彼であり、ルシフェルの案を出したのも彼である。

しかし、ルシルが集めてきた四人それぞれはルシル以外との面識がなかった。

そのため自己紹介を始めた。


「俺はスラム街出身のアレンだ。礼儀は知んないから容赦してくれ」

スラム出身だからか式典の際に着用していた礼服を既に着崩している。そこから礼儀を知らないというのは誇張ではなく事実であるということが見てとれる。

髪色は赤で少しつり目なため攻撃的な印象を受ける。


「僕はリアム。出身はタイラル王国。先月天使によって滅亡させられた国だよ。その影響でこの国に移住した。喧嘩は御免だからよろしく頼むよ」

リアムは少し寂しげな表情をしながらそう言った。おそらく多くの友、知人が行方不明もしくは亡くなってしまったのだろう。

しかし、その様子を見せないためか男性にしては少し長めの髪をしきりに耳にかける動作をし顔を隠している。

タイラル王国とは先月理由もなく天使の襲撃を受け滅亡した国。この世界ではわりとよくある話である。


「私はカイラ。私も特別馴れ合うつもりはないけど一応よろしくと言っておくわ」

カイラは今着ている礼服よりもカラフルな服が似合いそうな女性である。

彼女はショートカットの金髪姿で凛とした雰囲気を感じさせる。

しかし、馴れ合うつもりはないと言いつつもよろしくと言っているあたり本当は仲良くなりたいのだろうと推測できる。


「えっと、その私はリサ・・・・・・です。この国の第ニ王女です。よろしくおねがいします」

そう言って頭を下げるリサ。王女までがこのルシフェルに入っているということはそれだけ追い込まれているということに他ならない。

少しオドオドしている辺り人見知りなのが見てとれる。

黒い髪を肩甲骨辺りまで伸ばしており優しげな顔をしているのが特徴的だ。


「よし、自己紹介は終わったな」

全員が自己紹介したところでルシルが声を発する。

「なに言ってんだ、ルシ。お前がまだだろうがよ?」

アレンが自己紹介を終わらせようとしていたルシルに制止の声をかける。

ルシというのはルシルの愛称である。

「同意だね。僕たちを集めた張本人が自己紹介しないのはどうなんだい?」

「そうね。リーダーとして何か言うべきよ」

アレンに賛同するリアムとついでに意気込みも聞くカイラ。

「ルシルさんもすべきですよ」

最後にリサが一押しを入れる。

先程のオドオドした感じが見られないためルシルとは長い関係なのかもしれない。


会って当日で見事に全員の意見が一致した。これはルシルにも予想外であり彼は驚いた。

「皆知ってるんだからいらないだろう?まあ、良いか。改めてルシルだ。この王家に養子として引き取ってもらって以来リサ王女の護衛として仕えてきた。よろしく」

「30点」

「まあ半分の50点はあげましょう」

「甘いわよ。20点」

「み、皆さん何言ってるんですか?100点満点中120点ですよ」

自己紹介をした順に点を言っていく面々。

唯一リサだけが高評価だが、他の三人からの評価は低いものである。

「リサ王女お心遣い感謝します」

「いや、本心・・・」

このリサの声は小さくルシルには届かない。


「早速今後の方針を考えよう」

そのルシルの一言でようやく本題に入るのだった。

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