ブレイン・コード 〜『凡人』の僕が入学したのは『天才』だらけの学園でした〜
ごむら
生徒会選挙編
那由多と僕と知恵ノ輪学園
第1話 那由多と僕と知恵ノ輪学園
完璧なものなんて存在しない。
全世界全銀河全宇宙をくまなく探したとて、きっと完璧なものなんて何ひとつとして見つからない。
言葉の綾? そうかな、それもそうかもしれない。言葉だって完璧なものではないからな。
言語として、意味そのものを伝達するツールとしての言葉というのは、いささか意味を持ちすぎている。
全ての感情に名前がないように、完璧という言葉自体にも、きっとさまざまな意味と解釈が入り乱れた結果、俺の脳からお前の脳に、意味として伝達されているんだろうしな。
だからきっと、そんな不確かなものを追い求め、探し続けること自体が間違いなんだ。
抽象的な概念に、具体的な意味や形を見出す行為自体が、人間の業であり間違いなんだ。
でも面白いことに、この学園は、《知恵ノ輪学園》は、そんな完璧を追い求めた結果できている───いや、できていないのかもしれない。
きっとどこかに、穴はある。
それは俺かもしれないし、お前かもしれない。
さあ綴ってくれよ。お前の物語を。
矛盾だらけのお前が語る、矛盾だらけの物語を。完璧さなんてかけらだってない、お前の物語を。
時に観客として、時に敵として、時に壁として、時に友人として、時に死体として出てやるから。
見せてくれよ、俺に───
◇◆◇
僕、
《知恵ノ輪学園》。
それは『完璧』と称される学園。
幾度となく天才を輩出し、日本、ひいては世界にまで影響を強く発揮している学園。
若き『天才』が一堂に集い、競い、争い、高めあい、その才覚を遺憾無く発揮させるための、天才のための学園。
───じゃあ何故そんな『天才』のための学園に、なんの才能も持たない『凡才』である僕が、僕なんかが入学したのだろうか。
コンクリートでできている分厚い門を眺める。この学園がどれだけ偉大で、どれだけ《異常》なのかが見てとれた。
門をくぐると、校舎の前に聳え立つ知恵の輪の形を模したモニュメントが目に入った。先の方で円を結んだ二つの鉄製パイプが絡まり合っていて、それはいかにもよく見る形の知恵の輪だった。
その大きさは僕の身長(約165センチほど)の3、4倍はあり、たとえどんな巨漢であったとしても、扱うことなどできやしないほど大きな知恵の輪だった。
「巨人族用だな……これは」
僕は歩みを進める。
奇抜なのはなにもモニュメントだけではない。実際の校舎だって、負けないくらいおかしなデザインだ。
ハードカバーの小説を、真ん中の方で開いてめいっぱい広げたようなデザインであり、縦に入った窓が、まるで小説の文字のようになっていた。
なるほど考えたものだ。デザイン性を重視しながら、機能性を完全に排除したような感じでもない、いい具合のデザインだと、僕は素人目に思った。
この校舎も、在籍中の生徒であり、世界的に活躍するデザイナーである『
彼の作品をいくつか眺めてみれば、その独特すぎる感性が見てとれる。理解者……故に友達、そんなものが見つからないのも仕方ないのかもしれない。天才はいつも孤独とは、よく言うものだしな。
かく言う《彼女》も──天才故に孤独だった。
彼女。
僕の言う彼女こそが、僕をこの学園に招き入れた張本人であり、この学園の学園長を務める『
その一言で片がついてしまうほど、彼女は天才としか言いようのない、限りない天才だった。
彼女は御年9歳にして《知恵ノ輪学園》に在籍している化け物であり、その功績についてここで語り始めてしまえば、文字数が数万どころじゃ済まなくなってしまうほどの天才的能力を持った少女である。
僕が右ポケットに入れているスマートフォンにしても、彼女が開発した
「本当に……あいつは……」
僕がこの学園に入学したのは、彼女にだけ許された特例であり、本来ならば僕のような『凡人』が、この廊下を歩くことなど許されるはずがないのだが──彼女、那由多フカシギの推薦で、特別に僕はこの学園に入学した所存である。
「肩身が狭い──なんてもんじゃないな」
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