王子の冒険

玉置ぽえた。

第1話 王子、旅へ出る?

ある世界のある王国に、かおる王子がいました。

退屈が嫌いで、何にでも興味津々な王子は、時折お城を抜け出しては街へ出かけていました。

今日も、お城をこっそり抜け出して、以前に街で知り合った少女と一緒に、「お師匠さん」と呼んで慕っているおじいさんが営む魔法屋を訪れていました。

このお店には、不思議がいっぱい!

見たこともないような武器に、古い本、怪しげな香のする小瓶。

そして、冬の間だけいる大きな白いフクロウ。

王子は、ワクワクが詰まったこの場所と、優しいお師匠さんが大好きでした。

それなのに、今日の王子はなんだかぼんやり考え事…。

店にある、あるとき少女を助けるために手に入れた「竜の涙」と「小さなハープ」を

交互に眺めながらため息をつきます。

「 …旅へ出るのかい?」

お師匠さんは小瓶を拭く手と視線はそのままに、王子に尋ねます。

「うん…。」

「何を迷っているのかは分からんが、人生一度きりだ。行っておいで」

「母さんがさ、とても心配していてね。最近じゃ、門の前で仁王立ちしてさ、街へ出るのもやっとなんだ。」

「ハッハッハ…。そりゃぁ、お前さん。無茶ばっかりするからなぁ。」

「お師匠さん、ひとごとだと思って…。」

「まぁね。母親はいつでも心配するさ。」

「ただ、今はいましかないんだ。歳とっちまったら動けん。」

「そうだね…。お師匠さん。」

「とりあえず、帰るよ」

「あぁ。気が向いたらまたおいで」

店の入口の鈴を鳴らして、王子は店を後にしました。

次の日の朝

王子がこっそりとお城の門を開けて出て行こうとすると、

「かおる!」

と、後ろから駆けてくる王妃に呼び止められました。

お城に背を向け歩きだそうとする王子を後ろからだ抱きしめると

「行くのですね…。どうか、道中気をつけて。」

そう言い終わると、そっと手を離しました。

「行ってきます!」

かおる王子は王妃に背を向けたままそう言うと、お城を出て行きました。

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