第10話 未来へ――すでに持っているものと共に

 透華は、ふと立ち止まり、これまでの自分を振り返った。

 焦り、不安、比較——ずっと「足りないもの」を探していた。

 だけど、今は違う。


 「私は、もう持っている。」


 そう思うと、胸の奥がじんわりと温かくなった。




 ある日、透華は久しぶりにお気に入りのカフェへ足を運んだ。

 あの日、「あなたは、もう持っている」という言葉と出会った場所。


 静かにコーヒーを飲みながら、心の中で自分に問いかける。


 「私は、何を手にしているんだろう?」


 すると、自然と答えが浮かんできた。


 ・頑張りすぎなくても、自分を大切にできること。

 ・愛は、与えた分だけ巡ってくること。

 ・学びは、目を覚ますこと。

 ・お金は、流れの中にあること。

 ・健康は、楽しく整えられること。


 「全部、すでに私の中にあったんだ。」


 その事実を噛みしめると、目の前の世界がますます美しく感じられた。




 かつては、「もっと頑張らなきゃ」 という気持ちが人生を動かしていた。

 でも今は、「すでに持っているものを活かそう」 という感覚になっている。


 そんな透華の変化を、周りの人たちも感じていた。


 「なんか、透華って余裕があるよね。」


 「うん、力が抜けてるのに、すごく芯がある感じ。」


 友人や同僚の言葉に、透華は微笑む。

そ れは、彼女が自分の内側にある豊かさを信じられるようになったから。


 未来は、無理に切り拓くものじゃない。

 すでに持っているものと共に、軽やかに歩いていけばいい。


 すべては自分の中にあった

 透華は、カフェの窓から外を眺めた。

 街の風景は変わらないのに、見え方はまったく違う。


 「私は、もう持っている。」


 その確信があるから、これからどんな道を歩んでも大丈夫。


 目を閉じて、そっと息を吸い込む。

 心地よい風が、未来への扉をそっと開いていくのを感じながら——。


 「私の未来は、私が決める。」


 透華の新しい人生が、ここから始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

欠けていると思っていたものは、すべて私の中にあった まさか からだ @panndamann74

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ