第6話 本当のつながりを求めて

 透華は、最近の自分の変化を感じていた。

 仕事への向き合い方が変わったことで、心に少し余裕が生まれた。

 それと同時に、身の回りの人間関係にも微妙な変化が起こり始めていた。


 以前は、「愛されること」が大切だと思っていた。

 でも、今は「愛を知る」ことのほうが大事なのかもしれないと考え始めている。


 それが、「ワンネス・リレーションシップ」の本質なのかもしれない——。




 透華が最近読んだ本に、こんな言葉があった。


 「つながりとは、求めるものではなく、すでに在るもの。」


 「ワンネス・リレーションシップ」とは、相手と自分を切り離して考えるのではなく、

ひとつの流れの中にいるような関係性を築くこと。


 つまり——


 ・「愛してくれる人」を探すのではなく、自分の中の愛を育てること

 ・「理解してくれる人」を求めるのではなく、自分がまず相手を理解すること

 ・「支えてくれる人」を求めるのではなく、自分も誰かを支え合うこと


 そう考えると、人間関係の捉え方が変わってくる。


 「誰かに満たしてもらう」関係ではなく、「共に満たし合う」関係。

 それが、ワンネス・リレーションシップなのかもしれない。




 透華は、恋人の圭吾との関係を振り返った。

 彼といると楽しいけれど、どこか「愛されよう」と頑張ってしまう自分がいた。


 「もっと優しくしてほしい」

 「もっと理解してほしい」

 「もっと大切にしてほしい」


 そんなふうに、“愛されること”ばかりを求めていたのかもしれない。


 でも、本当に大切なのは、相手に何をしてもらうかではなく、自分がどう愛を表現するかなのではないか?


 透華は、圭吾に何かを「してもらう」ことではなく、

 ただ、一緒にいる時間を大切にすることに意識を向けるようにした。


 すると、不思議なことに、関係がスムーズになった。

 相手の行動に一喜一憂することが減り、ただ「一緒にいる」ことの心地よさを感じられるようになったのだ。


 また、友人との関係にも変化があった。


 以前は、成功や幸せを「比べる」ような気持ちがどこかにあった。

 「彼女はすごいのに、私はまだまだ」——そんな風に感じることもあった。


 でも、今は違う。


 人と比べるのではなく、「一緒に歩んでいる」と思えたとき、

 友人たちとのつながりは、もっと温かく感じられるようになった。




 透華は、ふと気づいた。


 「愛されたい」と思っていた頃は、ずっと「足りない」気がしていた。

 でも、「愛を知る」ことに意識を向けると、すでに自分の中に愛があることに気づく。


 誰かに求めるのではなく、

 誰かに与えるのでもなく、

 ただ、そこに「愛がある」ことを知る。


 それだけで、心は満たされていく。


 ワンネス・リレーションシップとは、

 「愛する・愛される」の二極ではなく、

 ただ、愛が“在る”という感覚に気づくこと。


 透華は、穏やかな気持ちで空を見上げた。


 恋愛も、家族も、友情も——

 どんな関係も、本当はもう、つながっていたのかもしれない。

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