あゆさん観察日記
ゆこさん
2025/2/22 あゆさん東京へ来る(1)
まるで嵐のような
生きるネタ帳、生きる黒歴史とまで言われていた彼女は、4年経ってもその才能は衰えることなく健在であり、そのすさまじさを見せつけてきた。
そんな彼女と久しぶりに会った時のエピソードを、忘れるのは大変勿体ないので、記憶が新しいうちに、つらつらと書いて行こうと思う。
まず初めに、偉大なる人物『あゆさん』とはどんな人なのかをざっくり紹介しよう。
私が大学生の頃からの知り合いであるあゆさんは、私より8つ上のお姉さんである。かれこれ10年以上の付き合いになる。
もはや親戚のお姉さんくらいの状態だ。
出会いはニコニコ動画の生放送がきっかけである。ドMのあゆさんの周りに凶悪なサディスト達が集まる斬新な雑談放送 (※諸説ある) がきっかけだった。
それはそれで多くの黒歴史を生み出した香ばしいコンテンツではあるのだが、今回は省かせてもらう。
性格は明るく、元気。というか若い。私より若々しい。20代前半の子とも楽しく話せるというコミュ力お化けだ。
どこへ行っても直ぐに友達を作ってしまうという逞しさ。もう化け物といっていいだろう。
そんな彼女が、2025年2月22日、北海道から東京へとやって来た。元々は関東に居たのだが、諸事情により北海道へ4年前に引っ越していった。この諸事情に関しても深く深い経緯があるのだがこれもここでは割愛させてもらう。
関東へ2泊3日の予定で来るにあたり、1泊目は私の家に泊まる事になった。初日は私と、もう一人の共通の知人の3人で会う事になっていて、翌日は別のネット友達に会いに行くという日程だった。
***
2月19日。予定の3日前の事。
『連絡ぎりぎりになってごめん💦 18時30分羽田空港着です! 大丈夫かな?』
というラインメッセージが入る。
ファッ!? 18時30分!? 夜!?
私は驚愕してスマートフォンを落としそうになった。まさかそんな夜だとは思わなかった。昼過ぎには合流して何か美味しい物をと考えていて、前々から丸1日予定を開けていた。
まぁ、それは仕方ない。夜であれば飲みに行く感じだろう。
気を取り直して、次は集合場所はどうするかという話になったのだが、そこでまず1つ目の爆弾が投下された。
『実は話していない事が1つあって、2月上旬に雪道で転倒して救急車のお世話になり、全治2から3週間の尾てい骨骨折と肋骨をやらかしました。今は動けるようになったので旅行は強行します✨』 ※文言の一部は割愛
ファッ!? 尾てい骨骨折ぅううう!?
何してるの。この人。常にネタは尽きないの?
私は普通に混乱した。
どうやらケツが真っ二つになったらしいが、旅行は出来るので来るという事だった。会う前からネタを投下するのは本当に辞めて欲しい。
久々であるため、あゆさんに対する耐性が下がっていたようだ。ダイレクトにネタが響く。会ったら耐えられないかもしれないと不安な気持ちになる。
その後、何が食べたいかと聞いてみるが、『何でもいい。任せる』とのことだ。グルメな人間に投げられるのは非常に苦痛ではあるが仕方ない。何を選んだところで文句は言われるのだ。私は品川駅付近のイタリアン系の店を20時に予約した。
***
当日。
色々と問題(駅で上手く合流できない、店までの道のりで建物内通り抜け禁止により迂回させられる等)はあったが、無事に予約時間までに店に着いて、3人で飲み食いをする。そして久しぶりの会話を楽しんだ。
案の定お店はあまりお気に召さない様で、店を変えて2次会に行きたいとの事だった。その発言によって、当然普通に私の心にナイフはグサグサと刺さりまくるが、慣れているので刺さったナイフを丁寧に引き抜いていく。
会話の内容にも当然のごとく多種多様な爆弾が投下されていくのだが、個人的な内容が濃いためここでは書けない。断腸の思いで割愛する。主にあゆさんの北海道生活についてお話を聞いた。
住んだことのない北海道へ移住し、そこで職を見つけて生きていくなんて、想像しただけで恐ろしい。雪との関わり合い方すら関東の人間は知らないのだ。本当に4年間頑張ったんだなぁと。話を聞きながらしみじみと感じていた。
それでも彼女は友達を現地で作り、趣味を見つけて楽しくやっていると言うのだから、本当に凄いなぁと。素直に思う。
22時過ぎ、私達は2件目へと向かう。品川駅前の飲み屋で良さそうな店を物色する。ここはもう、彼女に決めてもらいたい。私は存在感を消して着いて行く。
彼女はキャッチを完全無視しながら、自身の嗅覚を頼りにずんずん進んで行く。そんな様子も変わらないなぁなんて私は思いながら、寒さと戦っていた。
正直何でも良いから室内に入りたい。早く決めて欲しかった。
しばらく進んで、飲み屋のエリアの突き当りまで来てしまったところで、1つの肉バルのお店の前で、彼女は止まった。店の前に出ているメニュー表を見ている。すると、店の中から店員のお兄さんが出てきた。
「いま、4人席空いたので、直ぐ入れますよ!」
お兄さんが言う。だが、あゆさんは渋る。
もうそのまま入っちゃえよ、さみぃよ。と感じながらも私は無表情で事の成り行きを見守る。
「おすすめのメニューはこれです! 美味しいですよ!」
お兄さんはそう紹介する。しかし、彼女は悩んだままだ。
そして、おもむろに自身が手に持っている紙袋を指してお兄さんに見せる。
「これ分かる?」
それは会う人へ配るために持参した、お土産の『白い恋人』の紙袋だ。それはつまり『北海道』を意味するわけだ。
「北海道から旅行できてるんだけど、それより美味しい?」
いや、無理だろ。ここ品川だぞ。
私はお兄さんを気の毒に思う。
だが私の心配をよそに、お兄さんもコミュニケーション能力が高く、うまく返答して会話をしていた。
飲食店の店員さん流石です!
いつも酔っ払いの相手をしているのだろう。そのまま自然な流れで店をアピールしていた。
私は寒さの限界だったので、ここでいいんじゃないかと、入っちゃおうと促し、ようやく店が決定したのだった。
2件目の店でも、あゆさんのトークが炸裂する。一切尽きないネタに驚愕する。やはり濃い人生を歩み続ける人間は違うなぁなんて感じながら聞いていた。
ちなみに彼女が頼んだ、『ワイン飲み比べ』のワインはお気に召さなかったようだ。安いワインだとこっそり教えてくれた。
***
終電で家まで戻り、あゆさんを家に迎え入れる。
午前中が唐突に暇になったので、私は普段しない掃除までして部屋をピカピカにしたのだ! 私偉い。偉すぎる。
寝る前、北海道のお土産のチーズケーキを食べながら、私はあゆさんから最近の推し活について聞いた。推しの為に動画作成を行い、YouTubeやTikTokへ投稿していると言うのだ。フォロワー数も300人と言っていた。
は? 聞いてないんだが?
そんなクリエイティブな活動をしているのならば、教えてくれてもいいのに!!
ちょっぴり寂しさを感じたが、作成した動画を見せてもらえたので良しとする。
やはり表現というのは面白いなと感じた。媒体が異なれば表現方法は全く変わってくる。映像や効果音、音楽、文字の色すら使い方次第で化けるのだ。
小説を書いていると、いつ、誰が、何処で、どんなふうに、と書かなければならない描写という物があるのだが、映像や効果的な文字を使用すれば、それが誤解なく一気に伝わってしまうわけだ。成程なぁと勉強になった夜だった。
***
翌日、私は整体の予定を入れていたので、11時30分に家を出る事になっていた。あゆさんの予定は、夕方隣駅で友達と会うそうなのだ。だが、私が家を空けてしまうので、同じ時間に出る事になった。
友達との約束までの時間は、渋谷にあるという行きたいお店に行くそうだ。相変わらずアクティブである。
また、荷物を持って行動するのが辛いと言うことで、荷物は私の家に置き、もう一泊することになった。
13時過ぎ。
私は整体から戻り、家でのんびりと過ごしていた。17時頃に待ち合わせしていて、早く解散するかもしれないという話だったので、20時過ぎに帰って来るだろうかと思い、それまでに風呂や洗濯、掃除等を済ませることにした。
あとは彼女の帰りを待つだけ。
私はそうホッとして気を抜いていたのだ。
まさかここからさらに、彼女の新たな伝説が刻まれるなんて。この時の私は想像すらしていなかった。
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