楽しい楽しい雛祭り
夕日ゆうや
KAC20251
ぼクのクラスメいトには、かわイいお雛様みたイな花園さんと、ムカつくけどお内裏さまみたイなカッコいイ雨宮さんがイる。
ぼクとは無縁の世界の話だ。
二人にひなまつりのコスプレをさせたら……。
させたら?
イい。
すごくイい。
そうしよう。
今年のひな祭りは豪勢にイこう。
妹のヒナもきっと喜ぶ。
そのためには交渉しなイと!
ぼクは花園さんと雨宮さんに話しかけたが、気持ち悪がられた。
どうして?
ぼクは普通に話かけているだけなのに。
そうか。
その手があった。
神からの天啓でも降りたかのように、アイディアが閃く。
さすがぼク。
何かを引き摺る音が校舎に響く。
「な、なに!?」
「花園さん、いけ!」
「雨宮ちゃん!」
「いいから、いけ!」
逃さなイよ♡
ぼクは力任せに鎖を振るう。
先端についた刃物が宙を舞う。
血しぶきが辺りを染め上げていく。
まだだよ。
ぼクは花園さんを追いかける。
「うわあああ。お兄ちゃん、すごくかわいいお雛様だね!」
「そうだろう? お内裏さまもイいよ」
「本当。すごくイケメンだね」
「そうだろう、そうだろう」
☆★☆
ニュース速報が流れる。
県内某所で同級生の首をひな壇に飾るという非情にサイコパスな話題が世間を震撼させた。
犯人は現在も逃亡中らしい。
未成年にも関わらず名前も公表されている。
「これあんたの通っている高校じゃない」
母さんの声を聞いてわたしはスマホから顔を上げる。
そこに写った校舎は間違いなくわたしの学校だ。
寒気がした。
花園さんや雨宮さんとは仲が良いわけではないが、恐怖を覚える。
何かを引き摺る音。
わたしは背筋に冷たいものを感じた。
「で、でも大丈夫。わたし、そんなにかわいくないから」
「ひな壇ってお雛様とお内裏さまだけじゃダメなんだね」
ぼクは妹の言葉を思いだしながら、鎖を引き摺る。
長く血の染み込んだ鎖を。
「来ないで! わたしに近寄らないで!」
そう必死に叫ぶクラスメいトを悦の表情で睨む。
「おマえも否定するか!」
狂ったように鎖を振り降ろす。
血が噴き出し、辺り一面を鉄さびの匂いで充満させる。
母親がいた。
だがぼクには関係ない。
鎖を引き摺る。
ひな壇を完成させるために。
妹に最高の雛祭りを過ごさせるために。
次は誰がイい?
今、スマホを触っている人かな?
それともパソコンのマウスに触れている人?
さあ、次はキミのばんだ。
楽しい楽しい雛祭り 夕日ゆうや @PT03wing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます