俺のスキル、読書だけなんだけど? → 最強でした
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第1話 俺のスキル、読書だけなんだけど? → 追放されたら人生詰んだ
「お前のスキルは……読書(リーディング)、だけ?」
ギルド試験官の男が、まるで冗談でも聞いたかのように眉をひそめた。
「はい」
俺——レオン・アルヴァートは静かに頷いた。
今日、俺は王国魔導士ギルドの入団試験を受けに来た。
魔導士として生きるためには、まずギルドに所属しなければならない。
そして、試験を受けるには「スキル鑑定」を受ける必要があった。
しかし、その結果がこれだった。
試験官がため息をつく。
「……ふざけてるのか? どんなスキルが出るかは生まれつき決まっているとはいえ、お前、本当に貴族の出か?」
「ええ、一応」
俺は答えながら、頭を掻いた。
俺は、かつて王国の名門魔導士家門・アルヴァート家の三男だった。
——だが、戦闘系のスキルを持たなかったせいで追放された。
兄たちは《炎槍》や《雷鳴剣》といった華々しいスキルを持っていたが、俺のスキルは**『読書(リーディング)』**ただそれだけ。
「本を読むのが得意? だから何だ?」
「戦場でそんなもん、何の役にも立たん!」
そう言われて、俺は家を追い出されたのだった。
「ま、まあ……その……戦闘向きじゃないスキルでも、工夫すれば……」
「いや無理だろ、読書だぞ? 戦場で本でも読むのか?」
試験官たちの間で、嘲笑が漏れる。
「……ギルドにはいらないな。次の者、来い!」
——結果、俺は魔導士ギルドにも入れなかった。
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王都の大通りを歩きながら、俺はため息をつく。
「……どうするかな」
貴族の庇護もなく、ギルドにも所属できず。
もはや俺にできることは何もない——かと思ったが。
「おっと、大丈夫かい?」
突然、背中に何かぶつかってきた。
振り向くと、そこにはボサボサ頭の少女が座り込んでいた。
「い、痛たた……ごめんなさい!」
少女は、手に抱えていた本を慌てて拾い集める。
その姿を見て、俺はふと違和感を覚えた。
「お前、その本……」
表紙を見れば、それは古代魔導書だった。
王都でもなかなかお目にかかれない貴重な本だ。
「あっ……!」
少女は顔を赤くして、俺の手から本を取り返す。
「す、すみません! 急いでたんです!」
そう言うと、彼女はそのまま走り去ってしまった。
……一体、何者なんだ?
そう考えていると——
「おい、待てよ」
荒っぽい声が聞こえた。
振り向くと、先ほどの少女が二人組の男に囲まれていた。
男たちは、少女の持つ魔導書を奪おうとしているようだった。
(まずいな……)
俺に戦闘スキルはない。
だが、俺には**「読書(リーディング)」**がある。
俺は男たちを観察し、その装備や立ち位置を分析した。
(片方は《鉄製の短剣》、もう片方は《錆びたナイフ》。それと……)
視界に浮かぶ文字。
——「この路地裏の石畳:水分を含み、隙間が緩んでいる。強い衝撃で崩れる可能性アリ。」
(よし、使えそうだな)
俺は近くの荷車に目をつけ、思い切り押した。
——ガタンッ!!
「うおっ!?」
重たい荷車が傾き、崩れた石畳が足元に転がる。
男たちのバランスが崩れた瞬間、俺は素早く石ころを拾い、ナイフを持った男の手首めがけて投げつけた!
——ガキンッ!
「っ!? うわっ!」
錆びたナイフが男の手から滑り落ち、地面に転がった。
「くそっ、てめえ……!」
「お前たち、そのナイフ……呪われてるぞ」
俺はあえて冷静な表情を作り、低い声で言った。
「……は?」
「知らないのか? 《黒鉄鉱》で作られたナイフは、時間が経つと持ち主の魔力を吸い取るんだ。実際、指先が少しずつ痺れてるだろ?」
男たちが驚いて自分の指を見た隙に、俺は少女の手を掴んだ。
「こっちだ!」
「えっ、えっ!?」
少女は混乱していたが、それでも俺の後を必死に追いかけてくる。
背後で男たちの怒鳴り声が響いた。
「クソッ! 逃がすな!」
(まずいな……こうなったら)
俺は走りながら、もう一つの情報を思い出す。
——「この路地裏の構造:東側に抜け道あり。追手が追いつける確率、低。」
「よし……ここを右に曲がれ!」
俺は狭い路地へと飛び込み、さらに細い抜け道へと進んだ。
——そして、たった数秒後。
「……消えた!? どこ行きやがった!」
背後から、男たちの苛立った声が聞こえたが、彼らは俺たちを見つけられなかったようだ。
俺は少女とともに、静かに呼吸を整えた。
「……ふぅ、なんとか撒いたな」
少女はまだ驚いた様子で俺を見ていた。
「あなた……ただの一般人じゃないの?」
「いや、俺のスキルは読書だけだよ。」
「……本当に?」
少女は俺の顔をまじまじと見つめると、小さく笑った。
「なんだか、面白い人ですね」
こうして、俺とこの少女——ララとの奇妙な出会いが始まったのだった。
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