お前は大物になれるぜ……

 連れ帰った暗殺者は、色々と情報を得るためにアリスティラの魔法によって拷も———事情聴取されるだろう。


 ……アリス姉様曰く、(後で廃人になることを考えなければ)魔法で洗脳して情報を引き出すことぐらい簡単とのこと。暗殺者の背後関係は洗い出せるはず。



 その間に、俺は俺のやることをやろう。

 俺の暗殺未遂事件に巻き込まれてしまった獣人の兄妹……アルバとセイアに、できる限りの埋め合わせをしないとダメだからな。


 そんなわけで、王宮内の応接室。

 俺はこの部屋で、アルバとセイアの2人と改めて対面していた。



「すまない、待たせた。話し合いを始めよう」


「あ、あぁ……それはいいんだけど、それ・・はなんだ……?」


「うふふ……カイゼル君、可愛い……♡」



 俺が座っているのは、応接室のソファに座るエレイアの膝の上だ。


 ……俺がアルバとセイアの2人と話す、と言っているのに、エレイアは一切離す気がなかったからなぁ……。仕方がないから、もうこのまま話し合いをすることにしたのだ。


 これでもかと胸やお腹を押し付け、俺の髪に顔を埋めて深呼吸する度に『んっ、はっ……♡』と艶っぽい声を出すエレイア……客がいるにもかかわらず遠慮する気はない様子。



 せっかく俺が、王子らしく威厳のある風な口調で話しているというのに……全部台無である。



「……エレイア姉様は気にしなくていいぞ。こうしてればその内満足するから……」


「そ、そうか……」


「綺麗な人なのに、なんだか———」



 アルバがドン引きの目を向けてきて、セイアが『変な人』と言いかけて慌てて口を閉じる。何を言いたいかは俺にも分かるけど、相手は第四王女だ。言ってしまったら不敬罪である。



「とりあえず本題に入る。……俺は、これから先君達2人に協力してもらいたいと思ってるんだ」


「協力? 何に協力しろって? なんで俺らなんだよ?」


「その答えは、どちらもこれを見れば分かるだろう」



 『異次元収納』を開き、俺はとあるもの・・・・・を取り出す。光に包まれながら現れたそれは、ゆっくりと光が収まってその様相を露わにする。


 机の上に現れたそれは、銀色の金属を組み上げてできただった。



「これ、はっ……!?」


「見ての通り、義手と義足だ」



 そう、これは金属製の義手と義足だ。

 ゴーレムのパーツを作っているついでに、それを人間にも流用することができると思って……この世界には魔法があるから、魔法によってコントロールする技術も応用して自由自在に動かすことができる優れものだ。


 これに関しては、前世の技術に追いつけるものができたという自負がある。



「使っている金属には強度に優れたアダマンタイトを用い、特殊な方法で鍛造してパーツを作り、作成したものだ。1000個近いパーツを精密に組み上げている故非常に細かい動きも可能で、何より魔力伝導率が非常に高い! つまりこの義手は魔法の発動の邪魔になるどころか補助することも可能で、ただ失った身体を補うだけでなく、自身のさらなる飛躍に———」


「だぁぁぁぁっ! そんな一気に色々言われても何も分かんねぇよ!」


「———まだ説明の途中だろうが」


「うるせぇ! 誰かこいつを止めてくれ!」


「あぁ、カイゼル君……一生懸命に語る姿……たくさん喋る小さいお口……可愛い……♡」


「んむっ!?」



 恍惚の表情で熱い息を漏らすエレイアに口を塞がれる。もちろん、彼女の口で———つまりキスである。


 ……いや、いきなり何してるの姉様!?

 俺達姉弟でっ———あっ、舌が触れてっ……あっ、あぁぁぁぁぁ……。


 性癖が(ry



「俺は何を見せられてるんだ……」


「わっ、わっ……すごい……」



 困惑した様子のアルバと、両手で顔を覆いながらも指の間から二人の様子をチラチラと覗くセイア。


 目の前で繰り広げられる意味不明な光景に、アルバはカイゼルに抱いていた憎しみもいつの間にか薄れていっていた。……変なものを見せられて混乱しているだけ、とも言う。



「んっ……ふふ、ご馳走様……♡」



 ようやく口を離し、俺の顔を至近距離で見つめながらペロッと唇を舐めるエレイア。いや、あの……エレイアはヤンデレだけど、超美少女だから心が荒ぶるんだけど……。



「っ……」


「……♡」


「……~///」


「……で、続きは?」



 ……この状況で口火を切れるアルバ、やっぱお前は大物だぜ……。



「あぁ、すまん……ひとまずこれを装着して、使い心地だとか影響だとかを調べたい。もちろん安全性は信用していいぞ」


「本当か……?」


「もちろん。で、そうだな……経過観察のために、しばらくここに住んでもらうしかないか? 当然、衣食住は保証するし。あぁ、戦いに使えるかも知りたいから、武器の使い方も覚えてもらうか。……俺の研究に協力してもらうわけだから、それなりの賃金も必要か———」


「ちょ、ちょっと待て!」


「また途中で……」


「いや、止めるだろ! ここに住んでもらうって、俺とセイアがか? この王宮で!?」


「そう言ってるだろ」


「んなこと言われても———」


「……お兄さま、私はカイゼル様に従おうと思います」


「セイア!?」



 いまだ半信半疑のアルバに対して、セイアは俺に従うつもりらしい。まさか妹の方からそんなことを言うとは思っていなかったのだろう。アルバは驚いた表情でセイアへと視線を向けた。



「断っても、また今までの生活に戻るだけ……カイゼル様は、私達に手足をくれる上に食べ物や寝る場所も、お金までくれるって言うんですよ? そんなの、最高じゃないですか!」



 さては君、お金につられたな?


 まぁ内心がどうあれ、協力してくれるのは俺としても助かる。義手や義足の使用感なんて、誰かに協力してもらうしかないし……まさか四肢欠損の人をわざと用意するわけにもいくまい。



「っ~~……はぁ、分かった。セイアがそういうなら、俺もそうする」


「ありがとう、助かるよ」


「ただし、お前のことを完全に信用したわけじゃないからな! この義手も使えなかったらお前に叩き返してやる!」


「すぐに手のひら返しすることになるぜ? もちろん両手でな」


「お兄さまがすみません、カイゼル様。これからよろしくお願いします!」


「あぁ、よろしく」



 こうして獣人の兄妹、アルバとセイアが、俺の協力者となったのだった。

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