第2話

月曜と木曜の午後7時。



それがいつも彼女が来る時間帯だ。





――――ほら、今日も。




「こんばんは、先生」




カランコロンとドアに取り付けた鐘が揺れ、鈴を転がしたような声が聞こえる。




「やあ、こんばんは」




にこやかに微笑む僕に対し、彼女は艶やかな唇を吊り上げる。



……その仕草がなんとも欲を駆りたてることを、おそらく彼女は知っているのだろう。




「……あっ、」




すると、今日も痛々しく松葉杖をついている彼女は、靴を脱ごうとしてバランスを崩した。



その一連の動作が計算なのかどうかなんてどうでもいい。



ただ、目の前で僕の患者が怪我をするのは忍びないだけ。



僕は自分にそう言い聞かせて、彼女を受け止めた腕に力を込めた。




「いいの?こんなことして」




彼女を抱き上げて診療室まで運ぶ僕に、彼女は面白そうに声を掛ける。




「人払いはしてありますよ」




そう言うなり台に乗せると、彼女はクスリと笑みを深めた。

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