恋する乙女の独白もどき
突然だが、フェニキア王国のとある学園に通う私、ソフラには好きな男子がいる。俺は同じクラスのシャイセンテ君だ。でもこれは多分、少数派。クラスの女の子の中だと、シバス君の方が好きって人が多い。
まあ、その気持ちもわからないことはない。シバス君はイケメンだし、クラスの中心人物だ。入学初日にも皆を自己紹介をする流れに持って行っていたし、リーダーシップもある。
でもさ、それってちょっと完璧すぎない?ちょっと雲の上っていうか、好きにはなれないよね。
でも、それはシャイセンテ君のスペックが低いってわけじゃない。彼も勉強はシバス君の次にできるし、腕っぷしもリン君の次に強い。おまけに顔もそこそこかっこいい。でも、私が一番好きなのは彼の、身分によって態度を変えないところだ。彼は第二身分なのにもかかわらず、初対面ならば第三身分相手にも敬語を使うし、第三身分の私が困っていた時、当然のように助けてくれた。
まったく、皆シャイ君の魅力をわかってない。
……………勝手にシャイ君って呼んでみたけど、やっぱりちょっと恥ずかしい……。頭の中で何て呼んでもいいんだろうけど、ふとした時に口に出して嫌われたらいやだし、やめとこう。
彼はクラスでは、友達が多い方じゃない。よく話してるところを見るのは、リン君とリリアンさんだけど、少し前からあの二人がいい雰囲気?になってから少しシャイセンテ君が遠慮しているというか、話す機会がほんの少し減っている気がする。クラスで孤立したところで彼は気にしないだろうけど……………大丈夫かな?
────っは!そうじゃん!私が話しかけてお友達になればいいんじゃないの!?そうだよ!私天才かもしれない!!
いや、でも大丈夫かな?もしお友達になるのすら断られたら……………いやいや、シャイセンテ君はそんな人じゃない!それは私が一番知ってるでしょ!!
一番だなんてそんな……………。えへへ。
いやいやいや!流石に気持ち悪いよ!!なんで自分で考えて自分で照れてるの!!
え、シャイセンテ君に気持ち悪いって思われてたらどうしよう……………。私がよくシャイセンテ君のことを見てるのバレてないよね……………?
くそぅ、わかんない。思えば、シャイセンテ君と同じサークルに入りたくて、魔法錬金サークル?に入ろうとして、美人な先輩に断られた時から私はいろいろ空回っている気がする。ここは一度冷静に、かつ慎重にシャイセンテ君との距離を詰めれる機会を待つべきなんじゃないかな……………。
いやいやいやいや!ダメでしょ!弱気になっちゃ!!恋は押してなんぼ!!あ、そうだ!今度の武術大会、たしか出店なんかも出るらしいし、シャイセンテ君を誘ってみようかな……………?リリアンさんはたぶんリン君とまわるよね。いや、リン君は強いから、大会の方に出るかも?
……………あ!というか、そうじゃん!強いっていうならシャイセンテ君も強いんだし、大会に出るかも。
うー、どうなんだろ?まず彼の予定を調べるところから……………。
ううん、そんなことしてる暇はない。さっき言ったでしょ?いや、口に出しては無いんだけど!!
そう!今回の私は押せ押せで行くの!!!よし、じゃあ早速シャイセンテ君を誘おう!!
※
髪と服を整える。おかしなとこは無い……………よね?うん、大丈夫。変じゃない。
深呼吸を一つして、教室の扉を開ける。軽く見まわすと、既にシャイセンテ君は席に座っている。大丈夫。ここまでは予想通り。彼はいつも少し早めに教室に来るのだ。
そのまま彼のところまで歩き────途中の適当な席に着席。
なんで!?!?うぅ……………予想外。私が予想外にヘタレぇ………。
と、とりあえず、手鏡で前髪を確認しよう。なんだか崩れている気がする。……………うん、崩れて無かった。そりゃそうだ、さっき直したばっかりだもん。
どうした私、押せ押せで行くんじゃないのか。大丈夫、私ならできるって!!
深呼吸、深呼吸……………よし、行く……………行くぞ!!
席を立ち、シャイセンテ君の座る席の前まで移動する。
「ぁ、あの!シャイセンテ君!」
「え………あ、どうかした?」
驚いてる。そりゃそうだ。だって私、あんまり喋ったことないもん。急に話しかけられたら驚くよね…………。
「ぁの………えぇと、その……………ぶっ、武術大会の出店一緒にまわらない!?!?」
「え……………」
言った!言ったぞ私!!言い切った、よくやった!!
……………いや、でもよく考えれば、あんまり話したことない女子と一緒に出店なんて行ってくれないんじゃ…………。
うぅ……………ここまで来て弱気になるな私ぃ…………。
「別にいい……………けど?」
「あっ、ありがとう!!」
よし!!よぉし!!やった、やった!よくやった私!!よくやったあ!!!
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