強いかも。
さて、やはり学生は異世界でも友達を作りやすいのだろうか。いや、一概にそうとは言えないな。友達を作るのが苦手な学生もたくさんいるだろう。
何はともあれ、俺は異世界での二人目の友達を獲得することに成功した。
そしてそんな俺たち三人は教師に言われるがままに外の演習場にまで来たわけだが。
「……………なんでついてくるんだよお前たち」
「え……私たちはお友達ではないのですか?」
「いやいや、友達のはずだから何ら間違いはないぜリリアンさん」
「で、ですよね!!」
などと、そんな具合にリン君がいまだに恥ずかしがっているらしい。それとおそらくリリアン様のこれは茶番ではなく本気で言って本気でこの反応をしている。
「では、早速授業を始めるわけだが、騎士及び武官育成科に入学した君たちは戦闘力が重要視されることが多い。よって今から個々人の現時点での戦闘技能を測っておこうと思う」
そう言って説明を始めた我らが担任ウィロウ先生。簡単にまとめるとどうやら今から軽く生徒同士で一対一の戦闘をするようだ。流石に全員が同時に戦闘を始めるのではなく先生が見守る前で、2人ずつするようだが、貴族の子供もいるだろうに、危ないんじゃないか。と考えるのは俺にまだ現代日本的価値観が残っているからだろうか。それともこの科はそういうことも覚悟している人ばかりが入っているちょっと野蛮なものなのだろうか。
生徒の安全を守ってくれて安全に戦闘訓練ができるような何かが都合よくあるわけではないらしく、そのまま木剣やら魔法やらを使って戦闘をしていた。
そして戦闘が自分の番になるまでの間、クラスメイト達の戦闘を眺めていて一つ思ったことがある。
────俺、やれるかも。
というのも、この同級生たち。例えば今目の前で木剣をぶつけ合っている男子二人がまず俺よりも全然弱い。動きは遅く、振られた木剣も力しかこもっておらずあれならば棍棒か何かの方が使いやすいだろう。魔法は初見であったが、この男子生徒らの前に女子生徒が使っていたちょっと水を飛ばす程度のものならばどうとでもできる。
ありがとうございます父様。俺ちゃんと強くなってます。いやはや、小さいうちから頑張っていた(?)成果が出ているようで安心だ。よく考えてみれば俺は父様意外とはまともに戦闘をしていない。やはりうちの父様は人類でも上澄みでそれに鍛えられた俺もかなり強くなってしまったに違いないな。
そんなこんなで自分に自信が持ててきたところで遂に俺の番がやってきた。相手は……………ほう。
「お手柔らかに頼むよ、リン君」
「……………お前次第だ」
目の前には木刀………木でできたナイフ?のようなものを逆手で構えたリン君。
………ふむ。…………………うーん、どうしよう。思ったより強そうだぞ。
「はじめっ!」
担任の掛け声とともに姿勢を低くし踏み込み、距離を詰めるリン君。その動きが、他の生徒とは比べるまでもなく速い。
「ッ!」
俺にぶつかる直前で直角に曲がり俺の左側に移動すると、その低い姿勢から木刀が放たれる。風を裂くようにせまる首を狙った鋭い一撃を首を全力で後ろに倒すことで何とか躱し、リン君めがけ木刀を振り下ろしたが、リン君はそれを後ろに飛ぶことで回避する。
少し離れた位置で再び構えなおしたリン君を見ながらふと思う。
つっよ……………。
これ、勝てないのでは?いや、なんというか、想像以上にリン君が強いのだが。というか、明確に首を狙ってきたよな?え、これ命は狙われてないよな?大丈夫だよな?
「っふぅ……………」
いやぁ、せっかくなら勝ちたいよな。同級生だし。これで負けたらちょっとそれは悲しくなるよ。俺は力の限り頑張ってはいなかったかもしれないが、かなり頑張ってはいたし、ほら、異世界転生だし。うん。
呼吸を整え、集中する。すると体全体にじんわりと力がみなぎる感覚がする。父曰く、体内の魔力がどうのこうの、らしい。詳細は忘れた。多分あれだろう。魔力で身体能力を強化する的な感じだろう。そう考えるとあれだな。すでに魔法を使っているとも言えなくもないのかもしれない。
俺の変化を感じ取ったのか、リン君の目つきがさらに鋭く、俺の一挙一動を観察するようなものになる。俺はその視線を受けながら強く踏み込み。
「桜花流──三分裂きッ!!!」
特に深い理由もなく技名を叫びながら技を繰り出す。
魔力による身体能力の強化を利用し俺本来の身体能力を超越した状態で発動するそれは、一度の踏み込みで実に三度の斬撃を相手に浴びせる桜花流の奥義、その三段階目である。
「ッ!!!」
斬撃が迫る中、リン君が目を見開き驚き、ほんの少し前のめりになる。しかしもう遅い。もはやすべての斬撃は躱せないし、一本の木刀で三度の斬撃を受けることなどできない。いや………できるのか?そりゃ斬撃を放てるのだから受けることだって……………。
しかしその一瞬の焦りはリン君が強く踏み込み、ついで姿を消したことで杞憂に終わった。そう、受・け・はしなかったのだから。
「は?」
急に消えたリン君に間抜けな声をあげながら宙を切り裂いた三つの斬撃と斬撃によっておきた少しの風。
いや、それよりも急に消えたんだが、いったいどこに……………。
「上だ」
突如上から降ってきたリン君の声。その声に従うままに上を向いた俺の視界いっぱいにはリン君の振り下ろした木刀が映った。
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