第15話

妹は、泣くのをやめた。


泣き虫の妹。


この、頼りない妹に…

夢見がちな妹に、言うのだ。


「俺は、はるか昔の人間なんだ。

『死』を恐れていた者なんだ。」

「…。」

「死にたくなくて、ひとを捕まえてきては、人体実験を繰り返していた。

『自分の死の恐怖』とは、

『自分の意志』が、なくなるってことなんだ、そんなことが嫌で…未熟だろ?

俺が、誰かに呪いをかけることで、呪い殺す、そして、そいつを俺は『ぬけがら』と呼ぶんだ。

ここまで 分かるか?」


妹は、真剣に、うんうん、と、聞いている。


続けて、良太は言う。

「俺は―…この魂は、その『ぬけがら』の中に移り棲むことできる。つまり、死体の中に、俺の魂が『宿る』んだ。」

「じゃあ…」


そこに入ってる魂は言った。


「お前の兄は、もう この世にいない。」


「……!!!」



―――『母さんも 胃ガンでいなくなったんだから』

そう言っていた父というものを、思い出した。


しかし、この『妹』にだけは…


この魂に、初めて『罪』という意識が、芽生えたのだ。


そして、ぼんやり思った。


―俺はもう『孤独』じゃない…


…『秘密』を話せた。

このことを、共有する人間が…


ここにできた――…



妹は、夢と現実が、あいまいだ。


だから、信じてもらえると、分かったのだ。


「それでも、お兄ちゃんって、呼んでいい?」


 理々は、そう呟く。

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