第12話

「…今日は 優しくないんだね」

 良太は、そう言った彼女の、くったくのない笑顔にギクリとした。


彼女は、自分に『恋』をしている。


いや、自分ではない、前の『持ち主』だ、この体の…。


良太は、スクッと立ち上がり、

「もう 来るなよ。」

そう言って、雨の中、外へ ふらりと出て行った。


「お兄ちゃん、傘…!!」

 

妹が出ていくと、

兄は、いつの間にか タクシーをひろってきていて、家のそばに立っていた。


「何、今の…」

妹は、不思議でたまらない。

まるで、時空を飛び越えたような…


その兄は、ほとんど濡れておらず、玄関まで戻ってきて

「家まで送るのが 面倒だ。

ひとりで帰れ。」

そう言って、ポケットに手をつっこんだまま、彼女をのこしてウチの奥まで入っていった。






―――次の日、良太の姿が学校にあった。


 事情を、保護者から聞いていた先生に、席を案内された。


授業は、体のだるさで、すぐに眠りの体制に入った。


すると、すかさず先生が、良太に問題をあてる。

良太も、すかさず答える。


ところが、3時限目になったところで、

「くだらない」と、言い、

良太は、学校を後にした。

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