第8話

良太は、ベットの上であおむけになっていた。

 

 玄関に理々といた、彼女のことを、思い出していた。


 長い濡れた黒髪の かよ。


(あの女がこいつの…)


右手の指を開いてみる。

人差し指にはめている、シンプルなリング。


目をつむり、それに接吻をする。



―…それにしても、どうして こう、だるいのだろう。

この体になってから、様子がおかしい。


風呂に入る時も そうだ。

風呂場の全身鏡。

それに映る、自分の体が、やせ細っている。


男だから?


それとも、病気か?


それに『この体の男』の性格も、おかしいと思った。


男の部屋に、ひとつでもありそうな、ひわいな物が、なにひとつもない。


だからと言って、聖書や聖典があるわけでもない。

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