第7話

理々が、

「ごめんなさい、お兄ちゃんが…」

と、言って、タオルを二枚ほど持ってくると、

かよが、ボーっとしていることに、気付いた。

「かよちゃん…。」

「……。」

「理々、お姉ちゃんほしいんです。

でも…叶わなかったら…」

 このウチ ひとりの女。理々。

 理々は、寒い廊下で 泣きだした。

「記憶喪失って…」

 彼女がボソッと呟く。

「え?」

 顔を上げる理々。


「覚えてるはずなの。」


「……?」


「バレンタインにあげた指輪、今も 彼、

右手にしてたの。」


 かよは、理々の頭をゆっくり撫でた。


「大丈夫。たぶん良太に、何かあっただけのことだよ。きっと 元に戻るから。」


 薄眼で微笑む姿を見て、理々は、

その人を女神だと思えるぐらいだった。

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