第21話
「この曲で、どんな世界を造つくりたいの?」
―あんたの棲む極楽浄土さ―
「どんな物語にしたいの?」
―オレとあんたが好きあってた9年間さ―
彼女の声を、思い出しながら、
心の中で答えてゆく。
張りつめた空気の中、オレはオレだけの世界に入り込んでいた。
ステージから聴こえる、
世界中から集まった、
21人の音など、オレの耳に入ってこなかった。
そして、オレの名が呼ばれた。
オレは、ステージを歩いてゆく、が、
歩いてゆくスピードが、他の演奏者より遅い。
ピアノのイスに座って、しばらく経つ。
聴衆がイラつき始める。
審査員が、何か前兆に気付いた。
そして…
―飢えていた指が、
ピアノにがっつく。
…どんどん音が、空に舞う。
世界をつくりだす。
物語になってゆく。
――音が飛翔する。
技術は、オレを味方した。
独自の世界と物語は、誰しも圧倒させた。
この曲が、最初から
オレだけのために生まれてきたような、
エゴ的に誰しも感じたかもしれない。
そして、
弾ききった。
大きな歓声と、拍手。
それは、オレがその中でも最優秀者と暗示していたものだった。
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