空色杯 ハーフタイムフェスティバル

かみひとえ

あの空を見上げて

 いくら手を伸ばしても、ずっと届かなかったあの色は。


 めいっぱい広げた手の平には何も掴めず、ぱたり、右手は虚しく落ちた。魔法なんてあるはずないと自嘲しながら、この手の行方も気にせずに。


 ふと立ち止まって見上げた。その先の広さを思い知った。


 ワタシときらめく陽光の間を、空高く優雅に飛ぶシルエットが遮る。あまりにも眩しすぎて、それが鳥なのかドラゴンなのか、はたまたペンギンなのかはわからなかった。


 その姿を追いたいと思っても、ワタシはまだ立ち尽くしたまま。


 この靴は走るには可愛すぎる。このスカートは翻るには短すぎる。ワタシは言い訳ばかりだ。


 ワタシは何も持っていなくて。ちっぽけなワタシの手には、伝説の聖剣も、最強チート能力もない。ただその色を望むだけ。


 その先には、何があるのだろう。勇者でも魔王でもないワタシにも何か見えるのだろうか。


 そうか、どうせ何も持っていないなら、やってもやらなくても変わらないじゃん。


 それなら。


 世界かあなたか、なんて、迷うはずもない。ワタシはあなたに向かって手を伸ばし続ける。


 たとえそれが意味のないことでも、この世界が滅ぶのだとしても、それでも、だ。


 まだ、ワタシの手には届きそうもない。

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空色杯 ハーフタイムフェスティバル かみひとえ @paperone

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